TN31 寒冷地における工場排水の高度処理(脱リンを目的とした吸着ろ過処理)

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内容の要約

 この研究は、寒冷地向け排水処理法の一環として、脱リンを目的とした吸着ろ過処理について、1)複層ろ過池による接触凝集法、2)多段ろ過池による吸着ろ過法について検討したものである。

 内容は、吸着ろ過システムにおける脱リン材の検討、さらに実用性を評価するためにモデル水から実排水を用いるベンチスケールの連続試験へと展開された。そして最終段階における実排水を用いた連続試験の結果から、脱リン吸着ろ過処理の総合評価が得られた。

 1)複層ろ過池による接触凝集法

 総合的な結果からリン化合物60%除去における複層による接触凝集の最適な条件としては、ろ過比(アンスラ:珪砂)1:1、ろ過速度5m/hr、Al/pモル比の1.0〜1.2、pH0.7が妥当であると考えられる。

 2)多段ろ過池による吸着ろ過法

 (a)各システムの機能別評価

 第一段ろ過処理における脱リン効果は、Al/pモル比による影響が顕著である。また除濁効果については、接触凝集により満足すべき結果が得られた。第二段ろ過処理における脱リン効果は、低濃度領域での除去速度の影響が見られる。第三段ろ過処理における脱リン効果は、高濃度領域では満足すべき結果が得られた。

 (b)多段ろ過池における吸着ろ過の総合評価

 吸着処理に問題があり、特に低濃度領域における除去速度の影響について、吸着材の粒度および空間速度等を検討する必要がある。

 (e)実用化について

 本装置による脱リンについては、二、三の問題点を残しているが、これらの解決法として前段処理における脱リン効果を向上させるために、ろ層構成を複層から三層にして、後段処理の負荷を軽減させることが挙げられる。また一方、吸着処理における問題点については吸着材の選択から逐次見直せば、この方式による脱リン処理も有効なるものと思われる。

詳しい内容

 1. 複層ろ過池による接触凝集法

 (1)実験方法

 (イ)実験装置

 フィルターカラムは開放型急速ろ過方式で、内径155o、高さ3,400oの塩ビとアクリル製で、処理水量は最大0.2m3/hrである。

 (ロ)実験条件

 実験用原水に用いたモデル水は、水道水にリン成分としてリン酸1カリウムを添加し、PO4−P濃度を4.5±0.5r/lに調整したものである。凝集剤として硫酸アルミニウムを用い、添加する濃度は、ジャーテストおよび凝集剤添加量によるろ過特性の予備実験結果から考慮して、A15r/lとした。またpHの調整は水酸化ナトリウムを用い、設定値7.0に自動制御した。実験に用いたろ層は、上部にアンスラサイト、下部に珪砂をろ床支持用砂利層上に敷いて構成した、ろ層全厚は、900oとし、ろ層比(アンスラ‥珪砂)を各々1:1、2:1、3:1とした。オペレーションパラメーターとしては、ろ過速度、差圧、濁度を用いた。ろ過速度は5m/hr、7.5m/hr、10m/hr、差圧は最大許容損失水頭を3m、濁度はろ過水濁度を5r/lとして連続記録した。洗浄操作は、差圧および濁度の設定基準値またはリン除去率60%以下の値のいずれかが示された場合、実験を停止して逆流洗浄を行った。

 (2)実験

 複層による接触凝集の脱リンろ過実験結果を第1図に示した。

 この結果から、リン除去率60%における複層接触凝集のろ過特性として、以下のことが判明した。

 (イ)ろ層比(アンスラ:珪砂)1:1、ろ過速度5m/hrの場合、生産水量は40m3/m2の最大値を示した。

 (ロ)同一ろ層比では、ろ過速度の増加とともに生産水量は減少し、減少率は37.5〜70.6%を示した。

 (ハ)ろ層比を1:1、2:1およぴ3:1と変えた場合、上部アンスラ層が厚くなる程同一ろ過速度の生産水量は低下する傾向にあるが、2:1から3:1の過程では、同一か、または増加を示した。

 (ニ) Al/Pモル比は1.03〜1.18の範囲で行われたが、初期には70〜90%のリン除去率を示した。またリン除去率60%に近づくと凝集剤Alの漏出が見られた。

 (ホ)差圧については、ろ過速度の増加およぴろ層比におけるアンスラ層の増加とともに上昇する勾配が大きくなる傾向を示した。

 2 多段ろ過池による吸着ろ過法

 (1)実験方法

 (イ)連続装置

 実験に用いた連続装置は、3基の堅型塔を連結させたもので構成される。

 (ロ)実験条件

 実排水は下水一次処理水をベースとして、適宜コーンスチープリカ(CSL)乳化灯油、グルコース等を添加したものを利用した。実排水については油分100r/l、COD500〜1,000mg/lのものを処理する計画であった。従って、これらの不足する成分および濃度を調整した。この場合は、下水一次処理水(500l)にCSL(0.9l)を添加して調整された実排水である。凝集剤としては硫酸アルミニウムを用い、添加する濃度はpH7.0とし、水酸化ナトリウムにより調整を行った。

 (2)実験結果

 脱リン処理工程の連続試験結果を第2表に示した。硝化脱窒処理水の性状は、濁度51.5r/l(AV)、PO4-P21.5r/l(AV)である。第一段ろ過処理では、原水濃度(PO4-P)が高く、Al/Pモル比(0.3)が小さいため、処理効果が低下している。第二段ろ過処理では、高濃度領域(PO4-P)における活性アルミナの処理効果が顕著である。第三段ろ過処理では、低濃度領域(PO4-P)における活性炭による処理効果が見られる。除濁については第一段ろ過処理における凝集効果が非常に大きい。

 特長

 この研究は、寒冷地向け工場排水の高度処理技術開発の一環として行われたもので、脱リンを目的とした吸着ろ過に関するものである。ここで採用された方法は、1)複層ろ過池による接触凝集法と、2)多段ろ過池による吸着ろ過法で、今後二、三の改善を施せば実用化し得る見通しを得た。

応用範囲

 寒冷地における、下水、工場排水の脱リン処理技術

第1表 複層による接触凝集ろ過の実験結果
ろ速(m/hr)層比(PO4-P)濃度除去率(%) ろ過時間(hr)生産量(m3/m3) Al量(mg/)Al/Pろ過中のAl量(mg/l) 漏出時間(hr)損失水面(Sm)
入口(mg/l)出口(mg/l)
51:14.481.1275.0840 5.01.120.117131.2
2:14.061.2170.26.8344.2 1.030.236271.0
3:14.581.3271.27355.0 1.090-251.0
7.51:14.461.3869.1430 4.71.050.164138.4
2:14.481.4368.1322.54.9 1.090.403137.0
3:14.531.7761.8322.55.0 1.100-146.0
101:14.221.1173.72.525 5.01.180.402146.0
2:14.421.4467.31104.8 1.090-106.0
3:14.631.7262.92205.0 1.080-147.0

第2表 脱リン処理工程の連続試験結果
 第1筒第2筒第3筒
リン化合物出口P濃度(mg/l)10.81.780.81
名筒の濃度(mg/l)10.79.020.97
除去率(%)49.893.796.2
目標除去率(%)60.080.090.0
濁度出口濃度(mg/l)353.32.8
全除去率(%)93.293.694.6