寒冷地における水処理に対して抜本的研究と技術開発を早急に行う必要がある。研究開発の具体的目標は、(イ)処理水の水質をBODlOr/l、NH3−N2r/およびPO4−P0.2r/l、それぞれ以下とする。(ロ)処理方式は微生物処理を主体とし、水処理施設は屋外に設置し得るものとする。そのために装置の占有空間を出来る限り、小さくするよう立体かつコンパクト化し、また熱損失を防止するため可能な限り密閉構造とするなど、従来の開放池型平面構造に代わるいわば塔構造の装置構成からなるプロセス開発を主眼とする。
上記の目標に沿う高度処理プロセスとして、次の単位処理による構成が提案された。
原水→(1)疎水性媒体接触式油分分離処理→(2)多段曝気式活性汚染処理→(8)吸着剤を併用する微生物脱窒処理→(4)脱リンろ過処理
ここではそのうち(1)と(2)について紹介する。
(1)は、エマルジョン状に分散した油分を含む排水を疎水性媒体(ポリエチレンや人造ゴム等を粒状にしたもの)に接触させることにより、媒体表面に微細油分粒子を附着合一させ、大きな油滴に成長させて浮上分離する原理に基づいている。(2)は、従来主として開放面の大きい池型曝気槽を用いて行っている活性汚泥処理を、多数の目皿で仕切りをつけて多段化したカラム型曝気槽中で行わせるもので、これにより反応効率の増大、装置のコンパクト化および熱損失の防止等を計る。
1. 媒体流動法による油分処理
媒体流動方式による油分分離法は流動層の特性を利用するものであり、親油性と揆水性を兼ねそなえた媒体(ゴム類、特殊プラスチック類等)を油分の凝集核として排水中に浮遊流動させることにより、油滴への生長を行わせると同時に混在する懸濁物質の凝集効果をもあげるものである。また、媒体粒子の相互洗浄作用があるため、媒体再生が不用にな
ると考えられる。
(1)実験装置
塔の内径100o、高さ1,000oのパイロット装置を試作し、これを実験用処理装置として使用した。装置のフローシートを第1図に示す。本装置は流動槽、沈降分離槽、油分回収槽の三槽で構成されている。最上部の油分回収槽は分離された油槽の滞留部であり、原水は流入口から流入する。流動槽には親油性、揆水性の粒子による凝集核(媒体)を収納する。処理水が下向流の場合には、凝集核の比重は水よりさいものを使用する。最下部の沈降分離漕は水よりも重い不純物の沈降を行うもので、凝集核表面より脱落した附着物、重質油などは、ここで水と分離され、沈降分離槽排出口より排出される。油分と分離された水は流出口より取り出される。上下の多孔板は凝集核の浮上または沈降による流出を防止する。また、流入口、油分排出口の高さは、処理されるべき物質の状態、比重などにより計算して決定すれば、自動的に油水分離状態を保ったまま水と油は排出される。
(2)連続処理用媒体
媒体は、旭化成工業(株)製の商品サンメディアSM−110、SM−111(粒径3〜6o、比重1.0〜1.1)およぴポリプロレビン(粒径3〜4o、比重0.91〜0.93)を用いた。
(3)結論
イ. 媒体(SM−110、SM−111)の油分除去は、粒径5μm程度以上の分散油滴に対して優れていた。
ロ. 油分の除去率に最も大きく影響する処理条件は、流速と滞留時間の関係である。すなわち、試験結果では流速が小さい程、つまり滞留時間が大きい程、除去率が良くなる。流速を7o/sec〜20o/secで運転した場合、除去率60〜15%の結果であったが、流速を遅くすれば、さらに良い除去率が期待できる。
ハ. 媒体の充?量については、その影響がが小さいことが明らかになった。
ニ. 本処理装置の機能は吸着によるところが大であるので、あまり高濃度の油分を直接、本装置で処理することは、媒体の寿命を短かくすることになるので、前処理として比重差分離装置を設け、浮上油分を出来るだけ除去し、本処理装置の負荷を軽減する措置を講ずるべきである。
ホ. プラスチック媒体による油分除去法は、装置として比較的簡易であり、薬注も不要であることから、有望な油分排水処理技術と考えられる。
2 多段ばっ気法による微生物処理
本システムに採用したたて型多段ばっ気方式活性スラッジ法の装置図を第2図に示す。[1]は6段からなる円筒たて型ばっ気槽で、内径0.31m、高さ3m(1段の高さ0.5m)で、穴あき仕切板によって各段を分けている。各段の内容積は37.7l槽全体で226lである。仕切板は厚さ3oのアクリル樹脂製で、直径4oの穴がピッチ8pの三角形配置で19個あけてあり、この開口比は0.32%である。1段目の底面には、ピッチ4oの三角形配置で55個の空気吹込み口があり、コンプレッサーからの空気が計量された後、分配されて各吹込口から槽内に送り込まれる。各段のうち半分、すなわち高さにして0.25mはステンレス鋼製のウォータージャケットになっており、恒温漕からの一定温度液が循環している。他の半分はアクリル樹脂製で、サンプリングロと溶存酸素電極取付口が設けてある、槽全体を発泡スチロールで断熱してある。
寒冷地における工場排水の高度処理システムの連続試験の一環として、下水一次処理水をベースとしてコーンスチープリカーおよびグルコースにより有機物濃度を調整した人工下水を対象に、多段ばっ気槽による連続処理試験を行った。
その結果、次のことがわかった。
1)KLaの温度依存性は、水中における酸素の分子拡散係数の温度依存性によるところが大きい。
2)酸素消費量は基質添加量にほぼ比例するが、同量の基質を時間をかけて添加すると酸素消費量は増加する。
3)5℃において基質負荷が約0.5gBOD5・(gSSP)-1・(day)-1のとき、BOD5除去率95%以上、CODMn除去率85%以上が達成された。
4)多段ばっ気槽内忙おける窒素化合物およびリン化合物の除去は、余剰スラッジ中への取り込みによって起こっている。
特長
寒冷地における工場排水処理方式について、微生物処理を主体として、装置をでき得る限り小型に、かつ立体化し、かつ密閉模造とするなどして、従来の開放池型平面構造に代わる方法を開発した。
ここでは、その一部の単位装置を紹介したが、この研究の結果は、寒冷地向けの排水処理方式として、充分注目されるものである。
寒冷地における水産加工場、農産加工場など中小規模の排水処理技術。