TN29 オゾンによる下水高度処理

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内容の要約

 下水高度処理に対するオゾン処理の関心が高まって来た理由は要約以下のように思われる。

 1)在来型の処理法では不可能であった脱色、脱臭、除泡が、オゾン処理では容易にほぼ完全に除去出来る。

 2)殺菌力が従来使用されている塩素や二酸化塩素に比較し数十倍強力である。

 3)オゾン処理はスラジやその他二次汚染物質を生成しない。

 4)工業用オゾン発生装置の開発が進み、耐久性が強く、高性能の実用機が経済的価格で生産される様になった。

 5)酸素ばっ気による好気性処理法(二次処理)が開発され、その効果が認められる様になるにつれて余剰酸素をオゾンの発生原料にしようとする考えが出て来た。このように当所で提案した新しい高度処理(AWT)プロセスについて実用性の評価を中間試験により行ない多くの知見や成果を得た。これを要約すると以下のようになる。

 1)AWTにおけるオゾンの効用は多目的で特に有機物質の除去にはゼオライト又は活性炭との併用によりー層の効果を発揮すること、すなわちオゾンーゼオライト、オゾンー活性炭の併用はAWTに於て不可欠のプロセスであり、これ以外のオゾン利用はオゾンの本来的効用を著しく損なう結果となることが確認された。

 2)再生水の水質は極めて良質であり飲用水基準と比較しやや塩類濃度が高い程度で現在の脱塩技術を併用すると純水に近い水質が得られるが現在の水事情では下水の飲用水化までは要求されていないので現段階では十分用水として使用し得る。

 3)本プロセスに対する経済評価をランニングコストについて行った結果、オゾンおよぴゼオライトリサイクリングシステムでは活性炭処理を含めての処理費は処理水の水質と比較すると、充分安価なものであることが認められた。

詳しい内容

 1. 中間試験装置

 本中間試験装置は札幌市豊平下水処理場敷地の一部を借用し、100m2の仮設建屋内に昭和48年度より2ヶ年で建設され、同50年度より一年間試験操業を行った。試験装置は最大処理能力5m3/時でのフローシートを第1図に示す。

 試水の二次処理水は下水処理場最終沈澱池(塩素殺菌前)より取水し、仮設建屋内に送られる。

 2. オゾン処理装置

 処理水は、はじめにインゼクションカラムにポンプで塔頂部に送られ、頂部にあるエゼクターでオゾンを吸引し、気一液混合体となってエゼクターに接続されている溶解管を通って塔底部からカラム内に吐き出され、漕流水は次の散気型カラム上部の注入口より落差でカラム内に注入され、順次第3のカラムおよび気一液分離槽へ同様にして送られる。

 一方、オゾン発生機より出たオゾン化空気はコンプレッサーで2基の散気型気泡塔へ並列に送られ、各塔底部に設置したセラミック管状デフューザーにより微細気泡となってカラム内を上昇する。各散気型カラムおよび気一液分離槽の吐出ガスは多岐管に集められ、除泡カラム、デミスターに順次送られ、随伴する泡沫や霧状の水滴を取り除きダイヤフラムコンプレッサーで圧縮されて後述のオゾン濃縮回収装置に送られ、残存オゾンが濃縮回収される。回収オゾンはインゼクション型カラムのエゼククーで吸引される。この様に、本実験に使用されたオゾン処理プロセスはオゾン循環による閉回路プロセスが特徴で、この方式は著者らの多年の研究によって開発されたものである。

 3. オゾン処理によるTOD、COD、TOCの除去処理行程におけるこれらの成分の月平均除去率を水温、オゾン添加量を対比して第1表に示した。但し、名成分の除去率は凝集ろ過水に対するものである。

 4. オゾン処理工程におけるその他の成分除去

 (1)脱色、脱臭

 本実験に使用した二次処理水は下水処理場の汚泥焼却場より排出される濃厚着色排水の混入もあってやや褐色をおぴている。この有色成分は凝集処理、ろ過処理ではほとんど除去されないが、オゾン処理により完全に脱色された。

 (2)pH、濁度

 pHはオゾン処理の進行に伴い上昇する傾向を示し、濁度は減少する傾向を示した。

 (3)殺菌

 二次処理水中には一般細菌3,000〜4,000N/ml、大腸菌16,000〜18,000N/ml程度が検出されたが、凝集ろ過処理によりー般細菌は約50%、大腸菌は約70%除去された。残余の菌はオゾン処理により、ほほ瞬間的にかつ完全に殺菌された。

 (4)窒素化合物

 窒素化合物はNH3-N、結合N(ケールダール窒素)、NO2-N およびNO3-Nについてオゾン処理の効果を調べたが、N3-Nはほとんど除去されず、結合Nはわずかに減少した。また、NO2−Nは急速に酸化され、OC−2で完全に消滅した。一方、NO3−Nは徐々に増加する傾向を示した。

 (5)鉄、マンガン、その他重金属イオン

 二次処理水中の鉄はほぼFe3+で0.1ppm程度、マンガンはMn2+の状態で0.05ppm程度存在するが、オゾン処理により鉄は0.01ppm程度で、マンガンはほぼ完全に除去された。

 (6)ABS

 ABSは0.1mmp程度迄除去された。

 (7)その他

 二次処理水はとくに冬期間高分子炭素化合物に起因する発泡性を示したが、オゾン処理により発泡性は著しく低下した。また、オゾン除藻作用、増殖抑制作用は顕著である。

 特長

 下水、あるいは工場排水の高度処理について、オゾン処理が注目されている。この研究は中規模の処理プロセスにより、実際の下水処理場において、一年間の連続試験を行なったもので、その資料は価値の高いものである。とくに、その中のオゾン接触部については、独自の工夫がなされており、オゾンの有効度を高めている。

応用範囲

 下水、産業排水の高度処理技術



第1図 パイロットプラントフローシート
TN29F1.gif

 

第1表 オゾン処理によるTOD・COD・TOC除去率(%)
水温オゾン添加量g/m3(水)TOD除去率COD除去率TOC除去率
616.564.4550.462.852.7
718.053.5442.857.853.5
819.632.9058.0-44.4
919.216.5459.137.339.0
1016.016.7244.347.342.5
1114.125.7441.541.430.9
1211.740.11-39.132.8
111.127.5241.520.127.0
211.026.7940.140.635.7