TN27 シラスバルーン製造法

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内容要約

 シラスバルーンは火山灰を原料とした0.1o以下の微細な中空ガラス球で九工試において発明されたものであるが、その工業化について、中心となる焼成装置には北開試で開発された流動層方式が採用されている。

 火山灰中のガラス質のものがバルーン化するメカニズムは別としても、バルーンを製造する条件は、900℃程度の高温で急速に焼成することも九工試の諸研究で明らかなところである。従って、そのような焼成条件を与えるために、いろいろ装置が考えられる。例をあげれば、キルンあるいは電気炉、あるいは気流吹き飛ばし型等である。そして、流動層型もそのひとつである。

 凡そどんな装置でも、一長一短があり、幾つかの考えを組合せて、なるべく長を採り、短を棄てるより方法がない。ここに流動層型をとりあげてみても、大きく分けて、濃厚流動層と、稀薄流動層がある。この場合前者であれは、バルーン化するときにガラス質が溶融軟化するので、相互の融着がおきて、満足なバルーンがつくれないのみか、流動層の運転すら続けられないであろう。また、後者であれは、適切な温度パターンを与えることは一般に困難である。そうすると、この両者の結合、即ち適切な焼成温度あるいは温度パターンを与えるものとしての粗大粒子にする濃厚流動層を形成し、一方焼成される火山灰原料は、相互融着を避けるため稀薄系にすればよい。この組合せがここで採用したバルーン製造用流動層の考え方である。

詳しい内容

 1.装置

 北開試方式のバルーン製造装置の概略を述べる。

 (1)流動層

 第1図のような装置に火山灰原料などをいれて、次第に風量を増加させながら、分散板下の圧力を測ると第2図のようにある点で圧力値が一定になる。その点を最小流動化速度Umfという。それ以上風量を増加すれば、ある点で粒子が系外に飛び出し始める。これが終端速度Utである。実際の粉体には粒径分布があるから、この様にきれいにならないがUmfの数倍の条件では、あたかもフラスコの中でお湯が沸騰するような状態であって、なかの粉体は完全に混合されているので、内部のどの点を測っても温度は一定値を示し、また同時に温度の制御も極めて容易である。それから次第に流速を大きくすれば粒子は吹き飛ばされて層内を通過するのみで、前者に比べると極めて稀薄な状態となる。この状態を輸送層と呼んでいる。気流乾燥機などはこの一例である。

 いま、直径1o程度の硅砂を入れ、そのUmfの5倍程度で濃厚流動層を形成させておき、その中に径0.0oの粉体を送入すれば、密度が等しい場合、明らかに、徴小粉体は層内に留まらず系外に飛び出すことになる。まして、バルーンの様に極端な膨張によって、密度が変わる場合尚更この傾向は顕著であって、あとは簡単にサイクロンで捕集する。

 (2)熱の与え方と原料供給法

 装置の外から、壁あるいは管等を通じて熱を与える場合外熱型という。装置に電熱をまいて熱を与え、内部をしかるべき温度にすることは、小さな実験装置ではよく用いられる方法であるが、工業用の場合、塔径が大きくなり、しかも内部が900℃ともなれば、外熱型では困難である。したがって、内部に直接熱を持ち込む型、即ち内熱型となるのが一般である。

 ただここで注意しなければならないことは、われわれが小型の外熱炉で試験してみて、このパルーン製造というものは、当初予想していた以上に、厳格な温度条件が必要である。900℃台で20℃の差は品質にかなりの差がでることである。従って、与える「環境」として、900℃±5℃(あるいは950℃±5℃)程度の精度が装置全域について要求される。このことは、通常のバーナーを層内に持ち込んで燃焼させるというような方法では、フレームに接したバルーンは破裂して製品にならない。

 よって、ここでは第1図のような、下部からの燃料吹込み方式を採用した。ガスは分散板上で均一に燃焼する。この場合爆発が下部に伝播しないために、二・三の工夫を要する。

 原料も、スケール効果を消すために、下部から空気に同伴させて吹込な方式とした。従って、火山灰は、目皿下の80℃位の温度から瞬間的に層内の900℃に上昇することになる。なお層内温度は、分散板上5p程度から上は全く均一な状態である。

 2.結果

 (1)ベンチスケールの実験結果を第1表に示した。バルーン収率は、原料によって著しく異なることはもとよりであるが、この例のように、同一原料でも僅かの温度差によって、明らかな差が認められる。高密度、等も同様であって、かなり、精細な焼成条件を要求されることを示している。

 (2)条件にもよるが装置断面積m3当り凡そ1t/hr程度の処理量となる。

 (3)操作の点では、当初爆発等の懸念もあったが、現在は化学当量の条件でもその心配はない。またスタートアップはテストプラントでも30分程度で通常運転に入り得る。

 特長

 シラスパル−ンは、九工試で研究されたものである。しかし、工業化の当初においては、電気炉方式の製造装置に難点があって、大量生産は軌道にのらなかった。そこで開発されたものが、この媒体流動層による北開試方式である。この方式は、温度制御がよく、融着もおきないので量産にむいている。装置費も比較的安く、操作も簡便であるなどの利点がある。釧路石炭乾留KK、他数社で実用化されている。

応用分野

 火山灰の焼成のみならず、発泡物質の製造にも適する。

特許

 ○微細ガラス球の製造方法 (特許)834675



第1図 バルーンの実験装置
TN27F1.gif
1:原料ホッパー、2:スクリューフィダー、3:原料混入機、4:分散板、
5:焼成炉、6:サイクロン、7:焼成物ホッパー、8:ブロアー、9:オリフィスメーター、
10:電磁弁、11:LPC流量計、12:磁製ポール、13:熱媒体


流動炉の圧力降下の一例
TN27F2.gif

第1表 焼成結果の一例
 原料:道産火山灰、粒度:0.3mm以下、
 装置:6°内熱炉、媒体4号硅砂
  #1#2#3
層内温度900930950
空気温度(1)cm/sec21.521.521.5
LPG量l/min6.36.77.0
原量供給量Kg/hr6.06.06.0
焼成物嵩密度gr/cc0.250.240.20
バルーン収率(2)%495765
(1)空塔換算NTP  (2)水選したもの