TN26 高効率の吸収装置(横型攪拌槽)

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内容の要約

 気液接触反応装置は従来から工業的に利用されているものの他、新しく開発されているものも含めて数多くあるが、これらの装置の特性が明らかにされているものは非常に少ない。したがって、悪臭のようなガス中の微量成分の反応吸収除去に使用する場合、プロセス上の諸問題の解析、予測ができ難く、また、実用装置の設計基準があいまいである。

 当所では、上記のような点に留意して、横型攪拌槽と呼ばれる気液接触反応装置を手がけている。これは、横型円筒内の水平回転軸に固定した枕攪拌翼により、流体を接触させ、物質移動操作な行わせる回転式気液接触装置の一種である。実験装置の概略を第1図に示す。この装置は次に掲げるような特長をもっていることがわかった。すなわち、1)高速に回転する棟攪拌翼によって、槽内のガスを吸収液中に巻き込み、微泡にすると同時に、液の一部は滴状となり槽内に分散し、槽内に乱流攪乱状態が形定されるので、気液接触面横が非常に増大し、また、表面更新速度が大きくなるため、拡散律速である気一液系の物質移動には極めて有効である。また、反応系に固体粒子が懸濁する場合ならびに高粘性液の吸収液のときにも有効である。2)気、液ともに操作条件に支配されないホールドアップおよび滞留時間を選び得ること。3)ガス側の圧力損失が小さいこと、などである。

詳しい内容

 NOx、SOxの同時除去試験

 (1)反応吸収剤の検討

 第2図は、一例としてドロマイトを吸収剤として使用した時の、NO、NO2およぴNOx除去率との関係を示した。本実験に使用した装置は気泡塔(直径3.7p、長さ45p)で希釈ガスに空気を用いた。同図は、NO、NO2の比率によってNOxの除去率が大きく異なりNOxとしての除去率の極大値はNOとNO2が等mol近傍のところにあることを示している。

 他のNOx吸収剤についても基礎的検討を行い、次の様な結果を得ている。NOx濃濃500〜600p.p.m(NOとNO2の等mol近似ガス)をアルカリ土類化合物(Ca.Mg)の水酸化物および亜硫酸塩の懸濁液に吸収させた。NOxの除去率は亜硫酸塩が水酸化物よりもすぐれた吸収能力を持っていることがわかった。NO、NO2の等mol近似ガスにおいて、亜硫酸塩のNO2の吸収率は比較的大きいが、NOの吸収率は小さかった。

 排煙中のNOxの大部分がNOであるので、NOの吸収効果を改善させるために、アルカリ土類の亜硫酸塩に、鉄、キレート化合物を添加させた吸収液系について検討を行った。ガスとしては燃焼排ガスに近似した混合ガスを使用した。アルカリ土類(Ca、Mg)の亜硫酸塩にFe(II)−EDTAを加えることによって、NO単体ガス(500〜600p.p.m.)でもNOの吸収能は非常に増大する。共存するガスのうち500p.p.m.程度のSO2はNOの吸収能に対する影響は認められなかった。O2による影響は比較的大きくガス積算量の増加と共にNOの除去率が低下した。しかし、02が4%程度ではその影響は比較的小さかった。

 (2)実ガス実験

 第3図に、実ガス(重油暖房機排ガス)を用いベンチスケール試験結果を示す。ガス処理量は4.3m3/hrである。NOx除去率はNOx除去の大小によらず、ほぼ一定値を示しており、吸収速度はNOx濃度の一次に比例して増加する。また、本吸収装置においては、NOx除去率は吸収液濃度に依存しない傾向を示した。 NOx、SOx共に90%以上の除去率を達成しうることがわかった。

 NOx除去率は操作条件によってきまり、ガス供給速度が大きくなると減少するが、攪拌羽根回転数を大きくするとNOxはほとんど除去される。しかし、排ガス中に含まれる02濃度が高いと、02による吸収液の酸化が促進されるため、吸収液の冷化速度が早くなる。したがって、羽根回転数には適切な操作範囲があることがわかった。

 これらの試験結果をもとに、石炭ボイラー排ガスの脱硝脱硫パイロット試験装置(常用ガス処理量50Nm3/hr)を製作し、除去試験を行った。この排ガス中にはSOxやすすなどの媒塵がかなり含まれ、更に、タール状物質も含まれる非常にダーティな排ガスである。第4図に、NOx除去率と吸収装置の羽根回転数の関係を示した。排ガス中の02による吸収液の劣化を考慮すれば、羽根回転数は200rpm程度が限度であったが、NOx、SOx共に90%程度の除去率が得られること、また、Soxは少量のMg(OH)2を加えることによりほとんど除去されることがわかった。

 別の実験により、吸収液の寿命について検討し、次のことがわかった。 NOと吸収液の反応は気液固系の反応であるが、この反応において、難溶性のMgSO3の溶解速度は律速とならない。第一鉄キレートはNOの吸収速度を促進し、MgSO3は吸収液の寿命を延長する。NOはMgSO3を消費しており、MgSO3の消費速度はNO濃度の1次に比例する。また、02は第一鉄を酸化し消費するが、O2による第一鉄の消費速度は02濃度の0.5次に比例する。しかし、第一鉄濃度には依存しない。また、SO2はNOx吸収液の寿命にあまり影響を及ぼしていない。NOx吸収過程で、pHの変化は緩慢であり、吸収液の寿命はpHの影響をあまり受けない。

 以上のように、ダーティな石炭燃焼排ガスのNOx、SOx同時除去用として、本吸収剤と吸収装置は使用可能であることが明らかになった。

 その他、カーボン工場の排水中のシアンについてもシアンガス放散の実規模テストを行い有効な結果を得ている。

 特長

 横型攪拌槽は、高速で回転する攪拌翼によって、気液接触面積を増大し、高能率の吸収あるいは放散操作を行うことができる。操作条件は、かなり広い幅で変更できるから、ホールドアップ、滞留時間を任意に選択できる利点がある。またガスの圧力損失の少ない点も特長のひとつである。

応用分野

 湿式悪臭除去

 湿式NOx、SOx除去

 排水中の有害ガス、例えばシランガスの放散など公害防止機器に使用。



第1図 横型攪拌槽の概略図
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1:モーター、2:横型攪拌槽本体、3:ブロワ、4:デミスター、
5:ガス入口、6:液出入口、7:攪拌羽根


第2図 NO、NO2の混合比とNO、NO2、NOxの除去率
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入口NOx濃度:560〜720ppm/Air、反応材:ドロマイト(2wt%)、
ガス流量:2l/min、温度:20℃、液量:300ml


第3図 重油暖房機排ガス
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第4図 石炭ボイラー排ガス
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