TN23 脈動流動層

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内容の要約

 A.粒子飛び出しの減少効果

 流動層は、きわめて粒子の混合効果が良く、層温度が均一になるなどの長所がある反面、系外への微粒子の飛び出しがある。そのため、飛び出す粒子の反応が不十分となり、装置の設計や運転においてこの飛び出し現象は、重要な課題である。飛び出しの抑制方法は種々の方法がある。この研究では、回分流動層で流動化ガスに脈動を与え、微粒子の飛び出し実験を行うとともに、気泡のホルドアップ、頻度、上昇速度などを測定し、通常の流動層との比較を行った。

 流動化粒子としてシリカバルーンを使用し、回分式脈動流動層における粒子のとび出しについて実験による検討を行った。その結果、次のような知見を得た。

 1)脈動数が20−240l/minの脈動流動層では、脈動のない通常の流動層に比べて、粒子の飛び出しが少なく、細い粒子が選択的に飛び出す分級効果が少ない。

 2)脈動数を4001/min程度に増加させると、粒子の飛び出しの挙動は、通常の流動層の挙動と同様になる。

 3)脈動流動層における気泡の挙動は、通常の流動層と比べて、ほとんど差がない。

 4)脈動流動層における粒子の飛び出しは、フリーポード部におけるガス流れの息つぎ現象に強く影響されるものと考えられる。

 B.石炭乾留における攪拌の省略

 従来、流動層を用いて石炭を乾留する場合、しばしば分散坂上のデットスペースの石炭が発火し、反応温度が高くなりすぎるため攪拌機を用いることによって、不動粒子を強制移動させながら乾留する方法がとられてきた。しかし、熱をかける際の材質の熱膨張により分散板と横攪拌が接触し分散板を損傷したり、あるいは攪拌羽根が屈曲する欠点があるうえに、機械的にも複雑化する不便があった。

 そこで、極めて低い周波数の脈動を流動化ガスに与え石炭の流動乾留に応用した結果、攪拌機をを使用したのと同様の安定した乾留が可能であることを見い出した。

詳しい内容

 A.粒子の飛び出しの減少効果

 1.試料

 本実験で用いた試料は、シリカバルーンと呼ばれる中空のガラス状微粒子である。バルーンの性状を第1表に示す。

 2.実験装置及び方法

 実験装置の概略を第1図に示す。流動層は内径90oφ、分散板から排気口までの高さ1100oのアクリル樹脂製のものである。分散板は、2oφの孔を30個あけた開孔比が約1.5%の多孔板を使用した。ブロワーからの流動化空気は、サージタンク(100l用ドラム罐)、オリフィス板を通して、回転バルブによって脈動を与え、分散坂下部から流動層に供給する。回転バルブの回転を無段変速機で変え、所定の脈動を発生させた。なお、流動化空気の流量は、あらかじめ回転パルプの後に乾式流量計を設置して測定した。脈動時の流動化ガス流速Uoは、この流量の時間平均値から計算して求めた。回転バルブの開いている時間は1分間あたり約20秒間、閉じている時間は約40秒間である。

 3.実験結果と考察

 実験装置のフリーボード部における粒子の動きを目視により観察した。脈動数の少ない20〜240l/minの場合には、空気が流れた時に流子は上昇し、空気が停止している時には粒子は下方に引き下がられ、息つぎしているような状態が観察された。弗2図に示すように、通常の流動層(F=01/min)と脈動数の多い場合(F=4001/min)には、飛び出し量は多く、ほぼ同様な飛び出しの傾向を示している。また、脈動数の少ないF=20と2401/minの場合には飛び出し量は少く、両者は同様な飛び出し傾告を示している。

 B.石炭の乾留における攪拌の省略

 1.装置

 乾留炉の直径155oφ、高さ750oの連続自然式流動層を用いた。原料はスクリューフィダーで炉内に供給し、乾留されたチャーは溢流管から排出される。流動化ガスは、フロワーから回転バルブを通り脈動を与えられる。流動化ガスは空気を用い、回転パルプは変速機により回転数を変えることができ、回転バルブは2種類使用した。温度制御は原料の供給量で行った。分散板の開孔比は1.3%、孔径2oφである。

 2.実験結果

 原料には、粒径2oの太平炭を使用した。最小流動化速度は53p/secで工業分析値は水分5.3%、揮発分45.6%、固定炭素41.2%、灰分7.9%であった。

 乾留温度450℃に設定した時の脈動周波数と、その温度制御状態を第3図に示した。

 [1]は、(A)国転パルプを用い30サイクル/分の脈動を与えた時の状態であるが、設定温度士数℃とかなり良い制御状態を示した。

 [2]は、(B)回転バルブを用い30サイクル/分の脈動を与えた場合であるが、設定温度土5℃程度の制御状態を示した。

 [3]は、(A)回転パルプを用い120サイクル/分の脈動を与えた時の状態である。なお、実験途中脈動を停止し、平滑流に切り換えたところ約45秒後に発火し、温度制御が全く不可能になった。

 以上の結果、流動化ガスに1〜120サイクル/分の脈動を与えることにより、攪拌機なしでも安定した状態で運転が可能であり、しかも酸素反応率、処理量、製品の品質などにおいても攪拌機を用いたのと同様の結果が得られ、攪拌機を省略できることが分った。このことから、脈動流動層は工業的方法として有利であると考えられる。

 特長

 流動層において、流動化空気に脈動を与えることは珍しい試みである。その長所としては、(1)粒子の飛び出しを押えることができること。(2)石炭の低温乾留などにおいては、攪拌期を用いないと、局部的に発火し、所望の温度における操作は不可能である。この点、脈動空気によると攪拌機を使用しなくともよいことも判った。また、流動層の特質として、流動化ガスが過大となる反応などにも適する方法である。

応用分野

 流動層で局部発火を防止する場合、飛び出しの減少を図る場合、ガス量と反応量との不平衝の場合などに応用できる技術

 

第1表 試料
ParticlesSilica balloon
Density, ρs0.45g/cm3
Bulk density, ρb0.16g/cm3
Average particle size, Dp200μ
Minimum fluidization gas velocity, Umf = 0.7cm/sec
(By air at 20℃ 1atm)


第1図 実験装置
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第2図 粒子の飛び出し状況
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第3図 温度制御状態
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