TN22 石炭灰のガラス化及び発泡材

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内容の要約

 石炭灰として北海道電力KK江別発電所から排出される灰を試料とし、融点降下剤であるアルカリ土類成分の添加量(0〜35wt%)、カルシウムとマグネシウムの割合を変えた条件で溶融性、ガラス化性、発泡性、溶流牲(粘性)について検討した。

 融点降下剤(CaO+MgO)の添加量ならびにCaOとMgOの割合を変え、石炭灰のガラス化条件の拡大を検討した。その結果、融点降下剤の添加量が25〜30%の場合1,250℃〜1,300℃で良好にガラス化できることを見出した。またこれら各種のガラスについて耐アルカリ性試験を行い、ジルコニウム等耐アルカリ性を向上させる添加剤を特に加えなくても、相当に性能の良いガラスが得られることを見出した。以上の結果から石炭灰を原料とするガラスの用途として、コンクリート強化用ガラス繊維の可能性が認められた。また、発泡材について得られた結果は次の通りである。

 (1)試料は焼成温度上昇にともない収縮→膨張(発泡)→収縮(溶融)の過程をとる。重量減少は膨張前に終了する。したがって各試料は焼成過程において最少かさ密度が存在する。

 (2)フライアッシュが増加するにつれて最小かさ密度が増大し、焼成温度が高くなる。フライアッシュが一定ならば水ガラスが増加すると最少かさ密度が減少する傾向を示す。

 (3)かさ密度が滅少すれば熱伝導率、圧縮強度が渡少する。

 (4)建築材料においては熱伝導率0.1Kcal/mh℃以下のものか断熱材として有効とされているが、かさ密度0.3g/p3以下の試料がこの基準を満たしている。原料である石炭灰、くずガラス及び水ガラスの混合割合を調節することにより上記の基準を満す発泡ガラスが得られる。

詳しい内容

 1. ガラス化

 (1)石炭灰のガラス化試験

 石炭灰としては北電江別発電所灰(フライアッシュ)を用い、アルカリ土類成分を添加したバッチを作製した。石炭灰と添加剤の割合は重量比で石炭灰に(CaO+MgO)0〜50%の範囲で混合し、さらに、CaOとMgOの比も種々変化させた試料をアルミナルツポ内で加熱溶融しガラスカレットを作製した。ガラス化温度は添加する融点降下剤の量、質により異るが、1,250℃〜1,450℃であった。融点降下剤(CaO+MgO)を25〜30wt%加えた場合、1,300℃前後で発泡、ふきこぼれなくガラス化し、流動性の良いカレットが得られた。

 (2)耐アルカリ性試験法ならびに結果

 得られたガラスレットを粉末とし耐アルカリ性試験に供した。耐アルカリ性試験はガラス粉末の粒子径、アルカリ濃度、時間など試験条件の取り方で再現性が大きく左右される。本研究においては比較的溶出量が少ない条件下における試験結果が再現性に優れていることから、粒子径を105〜149μとし、5%NaOH50℃、1時間における溶解量の測定により行った。

 融点降下剤の量、質(CaO/MgOの異なるもの)溶融温度、および時間、等作製条件の異る試料約100種について上記耐アルカリ性試験を行った結果おおよそ以下のことがわかった。

 1)融点降下剤(CaO+MgO)の量が15%〜30%のガラス中に優れた耐アルカリ性を示すものが散見される。35%以上の添加量では耐アルカリ性は低下する。

 2)CaOとMgOの割合は1:1か又は若干CaOが多い場合に耐アルカリ性が高い傾向が見られる。しかし、CaO単独の場合は良い耐アルカリ性を示さない。

 3)融点降下剤が少ない場合は溶融温度より高い温度において1〜3時間熟成させると耐アルカリ性が向上する傾向が見られるが、融点降下剤が多い条件では熟成効果は見られない。

 4)耐アルカリ性を向上させる添加剤として知られる酸化ジルコニューム、酸化亜鉛は石炭灰を原料とするガラスに添加した場合にもその効果が見られる。しかし、この様な添加剤を加えないガラスでもCa0とMgOの添加量を適正にした場合、同等もしくはより優れた性能を示す場合が見られる。

 2. 発泡材

 (1) 実験試料

 石炭灰、ガラス、水ガラスはそれぞれ、北電江別火力発電所灰(フライアッシュSiO259.52 Al20323.50 Fe2O34.84 CaO3.04MgO1.66 MnO 0.04 TiO21.11 Na2O0.90 K2O2.48wt%)、市販ガラス粉(SiO271.01 Al2O31.78 Fe2O30.70 CaO8.88 MgO2.88 TiO20.08 Na2O12.33 K2O0.093wt%)、ケイ酸ナトリウム溶液(試薬JISl号)を実験試料とした。

 試料は、原料→調合→混練→乾燥→粉砕→成形→燃成→試料(試験片)の工程によって作成した。

 粉砕した試料10gまたは80gに成形用蒸留水10wt%を添加し、30oφ×12oまたは60×100×10oに成形後、焼成(600〜1,100℃、10分間保持後炉冷)した試験片について、重量変化、体積変化、気泡径、熱伝導率、圧縮強度を測定した。

 (2) 実験結果

 30oφ試料の各焼成温度における発泡状態、かさ密度を第1図に示す。フライアッシュ(FA%)ガラス(PG%)水ガラス(WG%)とした。

 試料の組成および焼成温度を選択することにより、約1.0〜0.2g/p3の範囲のかさ密度を持つ試料を得ることが可能である。

 60×100×10〜20oに成形した後、焼成(700〜900℃10分間保持後炉冷)した試料のかさ密度と熱伝導率関係を第2図に示す。断熱材としては熱伝導率0.1Kcal/mh℃以下のものが有効であり、かさ密度0.3g/p3以下の試料がこの範囲に入り、20s/p3以下の圧縮強度を有する。

 特長

 今後、石炭専焼火力発電所の増強に伴ない、多量に発生する石炭灰については、埋立その他の方策も検討されているが、一方ではより有効な資源として活用すべきであろう。

 この研究は、石炭灰をガラス化する基礎的知見をふまえて、イ)ガラス化→ガラス繊維、ロ)ガラス化→発泡材→建材などのルートを検討したものである。

応用範囲

 イ)ガラス繊維は耐アルカリであるから、コンクリートとの混合材、ロ)発泡材は断熱性を利用した建材その他。



第1図 各試料の焼成状況
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第2図 各試料の密度と熱伝導度との関係
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