羽幌産ベントナイト鉱床の規模は従来推定の域をでなかったがこの調査によって確定し、鉱床全体の品質性状が明らかになった。品質は全体に良好で調査対象地域の埋蔵鉱量は約60万トン、近傍地域の鉱量30万トンを合せて90万トンである。なお、この試験研究で取り扱った試料の数は約300ヶである。この鉱床は、沸石が混じった凝灰岩が層状に風化堆積したとされているので,この成因による羽幌ベントナイトの特徴があり、それは、[1]ところによって砂状の沸石が混入する、[2]全体に粘土状で、[3]高品質(かつ重金属を含まず)、である。従って、他所では見られないこの特徴を生かした利用法を考えるべきである。
ベントナイト原石を乾燥後微粉砕して、そのまま全量製品することに問題はない。この際若干の脈石が原石に混入している場合は選択破砕が可能で,微粉砕後の分級で若干品位をあげることができる。ベントナイトの他に含沸石ベントナイトを製品として生産する場合も、ベントナイトの場合と同様特に問題はないが、ベントナイト生産過程で分級した粗粒分を含む沸石ベントナイトの生産工程に投入すれば良い。そこで鉱床の規模、立地条件および回収費などから、羽幌のベントナイト鉱床が経済的に開発可能であると結論した。
羽幌ベントナイトを湿式で解砕によって高純度で、しかも非常に微細な粒子として回収(噴霧乾燥による)されるので、これの利用拡大について、2、3検討中である。また、ゼオライト原料としての利用拡大について検討したが、混入するα−クリストバライトの影響を受けて、これを原料とするメリットはなかった。なお、含沸石ベントナイトは農薬用として、その効果を充分に発揮するものと考えられる。
羽幌地域に賦存するベントナイト鉱床の全容と品質および性状が明らかになった。羽幌ベントナイトの品質は良好であり、現在市販されている高純度ベンドナイトに匹敵する。したがって、通常の用途向けにはもちろんのこと、高純度ベントナイトとしての利用拡大が期待される。
1 羽幌のベンドナイトについて
羽幌のベンドナイトの鉱床は、苫前郡羽幌町字上羽幌にあり、羽幌線羽幌駅の東南東約20q、旧羽幌炭鉱の2坑南部地域に賦存している。鉱床の賦存状況は今回の調査で明らかにされたが、(後述する)、それまでは南北におよそ1,000m、東西に300m、層厚4〜5mといわれていた。
昭和21年から個人による小規模な採鉱が行われ、その後、日本ベントナイト工業株式会社が石油掘作さく用泥水の混合材を採取する目的で、昭和33年春に、羽幌町市街に粉砕工場を設け、昭和35年までに約2,400トンのベントナイトを採堀した。ベントナイトの品質は良好で、泥水混合材としての規格品が生産されたという報告がある。昭和36年に採掘は中止され、現在未開発のまま有望な鉱床が温存されている。
今度の試料研究で取り扱った試料はおおよそ300ヶ余りであるが、この内代表的な試料について、その特徴的な性状について報告することにする。
試料1、2、3の化学分析値を第1表に、性状試験結果を第2表に示した。化学分析値で特徴的なことは、シリカ・アルミナ比は同程度なのに、ゼオライト(試料3)のナトリウムの含有率が、他の試料の数倍である。性状試験で、水分の数値は65℃で充分乾燥したもので、原石の水分ではない。試料2には若干のゼオライトが混入するので、陽イオン交換値は、試料1より若干高く、試料3が最高値を示す。表中示された膨潤度の18.5も原石中の最高値であり、鉱床全体の平均値は、15前後になるものと思われる。
2 利用試験
(1)造粒試験
ベントナイトとタルクの粉末に農薬を混合し、水を加えて混練し、成型機を通して乾燥した粒状(ミニペレット)の農薬として市販されている。混合割合はおおよそ3:6:1位であろう。
羽幌ベントナイトを使用した場合の成型性、水中崩壊性がどうなるかについて、市販品のものと比較して検討した。実験に供したベントナイトは市販品10種類、羽幌ベントナイト(粗粒、中粒、微粒)、含沸石ベントナイト、キシダの試薬として販売されているベントナイトと松前産の2種類のタルクを用いた。ベントナイトとタルクの混合比を3:7として、水を加えて混練し、一昼夜放置後24メッシュのふるいで裏ごしにかけ、65℃で乾燥した。出来上がったミニペレットは1o角状のか粒である。次に水を入れたシャーレの中にばらまき、ペレットの崩壊性大きいものが、農薬として都合が良いとされる。特に定量的結果はないが、これらを要約すると次のとおりである。
すなわち、以上の目的で使用されるベントナイトは、必ずしも良質のものではなくて良いし、粒度の粗いものが使用できる、などの知見が得られた。
(2)利用拡大
先に述べたように、羽幌ベントナイトは良質で重金属を含まないので、かつ湿式処理をすると、さらに高純度のベンドナイトが回収されるので、医薬品、化粧品などに利用される。この場合、他の市販品よりすぐれた分散性、被膜形成性、レオロジー改質能、膨潤力を有しているものと考えられる。
鋳物用、農業土木用そして農業用には、さほどの品質が要求されないので、含沸石ベントナイトを充当すると良い。その外なつ染塗料、水系塗料、ワックスなどの利用拡大がはかられるものと考えられる。
(3)A型ゼオライトの合成
A型ゼオライトは、一般的にはけい酸ナトリウムとアルミン酸ナトリウムを反応させてつくられている。また天然鉱物を利用する方法としては、[1]カオリンを焼成し、易反応性の非晶質のメタカオリンとし、これに水酸化ナトリウムを加えて作る方法[2]酸性白土(モンモリロナイト系粘土)を硫酸で処理し、けい酸を取り出し、それにアルミン酸ナトリウムを反応させて合成する方法が知られている。今回はベントナイトを出発原料とするA型ゼオライトの合成について検討した。この結果から、ベントナイトは反応性が低いので、ゼオライトの合成原料として使用するためにはさらに検討を要すると考えられる。
羽幌産ベントナイトは、未開発であるが、この調査によって鉱量も充分にあり、高品質で、かつ重金属を含まないなどが明らかになった。したがって、その利用は充分に考えるべきである。とくに、ここで示されたような湿式解砕法によって、さらに高度な利用も計ることができる。
農薬増量剤など一般的な用途の他、精製品は医薬品、化粧品などの高級品への利用
○塗工用カオリンの製造法(特許)1206771
元素名 | 試料1 | 試料2 | 試料3 |
SiO2 | 73.82 | 74.48 | 71.07 |
Al2O3 | 14.75 | 13.17 | 12.67 |
Fe2O3 | 2.23 | 2.04 | 1.07 |
MnO | 0.03 | 0.03 | 0.02 |
TiO2 | 0.01 | 0.01 | 0.11 |
MgO | 1.74 | 0.94 | 0.94 |
CaO | 0.97 | 1.42 | 0.03 |
Na2O | 1.44 | 0.92 | 3.34 |
K2O | 0.35 | 0.81 | 0.87 |
Ig.Loss | 4.54 | 6.03 | 8.76 |
試料名 | MOI | PH | CEC | MBA | SWP(重量法) | MOI:水分 PH:水素イオン濃度指数 CEC:陽イオン交換容量 SWP:膨潤度 MBA:メチレンブルー吸着量 |
試料1 | 5.1 | 9.9 | 75.7 | 56 | 19(7.6) | |
試料2 | 3.7 | 9.7 | 92.5 | 32 | 5(2.0) | |
試料3 | 1.8 | - | 122.3 | 10 | -(-) |