現在石炭火力発電用の石炭量は約1000万トンであり、今後の増設を考えると一層増加する状況にある。この石炭火力の最大の廃棄物は、電気集じん機で捕集されるフライアッシュであって、使用炭の平均灰分を20%とすれば、その排出量は150〜200万トンを超えることになる。フライアッシュは、概ね200メッシュ以下の球状粉体で、主成分はSiO2である。現状では排出量の一部はセメント混和剤として用いられているが、その他は未利用のまま埋立処分に回されているので、この利用法の開発は一層望まれるところである。そのひとつとして、フライアッシュを原料とする肥料の製造が試みられているが、その製造法において、あらかじめ原料に、燃料として微粉炭を混合し、自然法によって流動焼成をする方法を開発したので、その経過を報告する。
この方法は既に、電発プライアッシュKK磯子肥料工場において使用されており、期待通りの実績をあげている。また、操作上からも極めて安定しており、十分スケールアップに耐えることができる。特徴的な点をあげると、(1)灯油燃焼炉の熱風による焼成法に比べて燃料費が格安になること。(2)製品のく溶率が高いこと。(3)熱風方式では、分散板及び原函が著しく高温になる点が難色であるが、この方法では、たかだか300℃で、装置保持上も有利である。(4)ただし、微紛炭混合のため前処理の容量は増加することになる。
1.フライアッシュ
フライアッシュの成分は、石炭によりやや異なる。ここで用いたものは、太平洋炭のフライアッシュであって、分析値は第1表の通りである。
2.製造プロセス
製造プロセスの全容は第1図に示した通りであるが、そのプロセスの中心となる燃成法について、種々検討した結果この研究において開発された「微粉炭巻き込み流動燃焼法」を採用した。
3.焼成法
原料は第1図からも分るように、[1]フライアッシュ、[2]水マグネシウム又はドロマイト、[3]微粉炭、[4]苛性カリが、最終製品の成分を想定して配合される。粒度は2〜3oである。
焼成装置は流動層であって、パイロット段階の概要を第2図に示した。流動層を採用した大きな理由は、1)温度制御が精密に行われ、温度分布も少ないので安定した製品が得られること。2)不動部分が少ないのでクリンカーの発生がない。3)熟収支も良好であるなどである。
この実験用流動層について概略の説明をすると、塔径6、塔長1mのベンチスケールのものである。分散板は単板に2oの穴を開孔比1.5%に開けたものを用いた。また製品は、主として溢流管から得られるが、その位置は分散板から25pのところについている。運転方法は、スタートにあらかじめ電熱を用いるが、400℃を越すと、包臓した微粉炭が燃焼を始めて昇温するから電熱を切り、所定温度に達したならば、供給量制御によって自動運転に入る。実装層ではスタートの場合は、別に熱風発生炉をもっているが、基本的な差はない。
4.けい酸カリ肥料
けい酸カリ肥料の試作品は、数年間にわたって、全国の農業試験場などで試験が行われた。その結果、肥料として、非常に優秀なものであって、次のような癖徴があることが証明された。
(1)濃度障害がない緩効性肥料である。
(2)土壌条件に左右されないので、どんな土地にも施肥できる。
(3)作物の根を丈夫に育て根群の発育を良くする。
(4)施設園芸や、追肥の困難なマルチ栽培に効果がある。
(5)イモチ、ゴマハガレ病の発生を防ぎ、畑地の土壌伝染病や、ネコブセンチウに対する抵抗性等に効果が期待される
(6)野菜、果実、花奔等の作物体内の塩基性バランスを良くし、輸送中の「しおれ」や荷いたみを少なくする。
また、水耕栽培で実験した結果も、分ケツ率の向上とか、倒伏防止等、良好な結果を得ている。
特長
けい酸カリ肥料製造の基礎試験の結果によると、焼成温度と滞留時間によって、く溶性カリ、特に可溶性けい酸の量が著しく変化することがわかった。公定規格を満足するためには、これらの条件を充分に満たすような焼成法が必要となり、その点から流動焼成法が選定された。しかも、重油を使わないで、原料に石炭を混練する方法が開発されたのである。
この方法は、コスト的にも、装置的にも、また製品の品質からも最善の方法である。
他の肥料、あるいは無機物の焼成法に応用できる
○ク溶性けい酸カリ肥料製造方法(特願)1057768
成分 | SiO2 | Al2O3 | Fe2O3 | CaO | MgO | K2O | B2O3 |
含有率 | 47.45 | 20.03 | 7.08 | 8.38 | 1.39 | 1.15 | 0.73 |
第2図 装置
1. 流動焼成炉 2. 分散板 3. スクリューフィーダー 4. 可変速モーター 5. 製品受器 6. サイクロン 7. リングブロワー 8. オリフィス流量計 |