本研究はポリオレフィン系プラスチック廃棄物を加工・処理した安価な天然ゼオライト触媒(粒径3−5o)を用いて比較的低い温度で2段階で熱分解を行い、常温で液状の炭化水素油を得るものである。1段目では槽型反応器内に触媒を投入し、攪拌させながら430℃から460℃の温度範囲で熱分解させ、熱分解速度の促進と反応器壁へのカーボン付着・固化を抑制する。2段目の触媒充てん塔では1段目で熱分解させて生成した蒸気状生成物を430℃から460℃の温度範囲で接触分解させ、生成油を軽質化させることにより油化する技術である。ベンチスケール規模の実験装置で2段階の接触分解を行った結果次のことが判明した。
(1)1次分解槽に天然ゼオライト触媒を使用してポリエチレンを熱分解すると、触媒なしの熱分解に比べて処理量が3.3倍ほど多く処理できる。
(2)2次分解塔に同じ触媒を使用し引き続き接触分解すると、生成油の低分子量化が行われ、常温で液体状のガソリンと灯油との中間留分に相当する油が得られた
(3)接触分解によって触媒カーボンが含蓄されるために、槽内壁の伝熱の悪化防止と配管などの閉管の阻止が可能であった。
本プロセスの実用化開発は、新技術開発事業団の委託開発課題の一つに選ばれており、(株)サンエスにおいて2カ年の計画で引き続き進められている。
1.接触分解装置の概要
ベンチスケールの実験装置を第1図に示す。装置の構成は原料ホッパー(容積24l)、1次分解槽(容積70l)、1次分解槽加熱バーナー(灯油を使用)、2次分解塔(容積35l)、生成物の水冷却器及び生成油とガスの流量計から成っている。
原料のポリエチレンは予め計量されて原料ホッパーに投入され、10分間隔ごとに断続的に固体のまま1次分解槽内に供給される。1次分解槽には加工・処理をほどこした天然ゼオライト触媒25s(30l)が予め投入され、攪拌翼(20回転/分)で攪拌されている。1次分解槽内の触媒部分の温度は灯油バーナーの調整によって熱分解温度430℃から460℃に保たれており、供給されたポリエチレンは直ちに設定した温度まで加熱されて分解される。この熱分解温度で蒸気状生成物となるまで滞留し、低分子化するにつれて2次分解塔に導かれる。2次分解塔では、天然ゼオライト触媒26sほど充てんされており、電気ヒーターで1次分解槽と同じ温度に調節されている。蒸気状生成物は2次分解塔を通過する過程において接触分解され、水冷却器で20℃程度に冷却されたのち、ガスと油に分離されてそれぞれ流量計に導かれる。Cl−C5の低級炭化水素はガス流量計を経て系外へ出る。一方、C5以上の炭化水素は液状油となって貯液槽に貯えられ、一定時間毎のレベル測定により生成油の留出量が計測される。
廃ポリエチレンからの燃料油の製造
本研究はポリオレフィン系プラスチック廃棄物を加工・処理した安価な天然ゼオライト触媒(粒径3−5o)を用いて比較的低い温度で2段階で熱分解を行い、常温で液状の炭化水素油を得るものである。1段目では槽型反応器内に触媒を投入し、攪拌させながら430℃から460℃の温度範囲で熱分解させ、熱分解速度の促進と反応器壁へのカーボン付着・固化を抑制する。2段目の触媒充てん塔では1段目で熱分解させて生成した蒸気状生成物を430℃から460℃の温度範囲で接触分解させ、生成油を軽質化させることにより油化する技術である。ベンチスケール規模の実験装置で2段階の接触分解を行った結果次のことが判明した。
(1)1次分解槽に天然ゼオライト触媒を使用してポリエチレンを熱分解すると、触媒なしの熱分解に比べて処理量が3.3倍ほど多く処理できる。
(2)2次分解塔に同じ触媒を使用し引き続き接触分解すると、生成油の低分子量化が行われ、常温で液体状のガソリンと灯油との中間留分に相当する油が得られた
(3)接触分解によって触媒カーボンが含蓄されるために、槽内壁の伝熱の悪化防止と配管などの閉管の阻止が可能であった。
本プロセスの実用化開発は、新技術開発事業団の委託開発課題の一つに選ばれており、(株)サンエスにおいて2カ年の計画で引き続き進められている。
1.接触分解装置の概要
ベンチスケールの実験装置を第1図に示す。装置の構成は原料ホッパー(容積24l)、1次分解槽(容積70l)、1次分解槽加熱バーナー(灯油を使用)、2次分解塔(容積35l)、生成物の水冷却器及び生成油とガスの流量計から成っている。
原料のポリエチレンは予め計量されて原料ホッパーに投入され、10分間隔ごとに断続的に固体のまま1次分解槽内に供給される。1次分解槽には加工・処理をほどこした天然ゼオライト触媒25s(30l)が予め投入され、攪拌翼(20回転/分)で攪拌されている。1次分解槽内の触媒部分の温度は灯油バーナーの調整によって熱分解温度430℃から460℃に保たれており、供給されたポリエチレンは直ちに設定した温度まで加熱されて分解される。この熱分解温度で蒸気状生成物となるまで滞留し、低分子化するにつれて2次分解塔に導かれる。2次分解塔では、天然ゼオライト触媒26sほど充てんされており、電気ヒーターで1次分解槽と同じ温度に調節されている。蒸気状生成物は2次分解塔を通過する過程において接触分解され、水冷却器で20℃程度に冷却されたのち、ガスと油に分離されてそれぞれ流量計に導かれる。Cl−C5の低級炭化水素はガス流量計を経て系外へ出る。一方、C5以上の炭化水素は液状油となって貯液槽に貯えられ、一定時間毎のレベル測定により生成油の留出量が計測される。
2.試料及び触媒の特性
試料の高密度ポリエチレンは粒径3.5oφ×2.0oのペレット状のもので、粘度平均分子量6.5万、灰分0.049%、密度0.954g/CCである。天然ゼオライト触媒の組成割合は、SiO265.0%、Al20312.5%、その他22.5%であり、粒径3.0m/m、カサ比重0.77g/cc、充てんの空隙率0.55cc/ccである。
3.接触分解装置による連続試験結果
(1)1次分解槽の試料処理量
1次分解槽において、触媒層の軸方向及び平面方向の温度差を30℃以内として実験を行うために設定した熱分解温度によって、処理が定められる。1次分解槽に触媒又は砂(粒径0.15o)を使用したときの熱分解温度と処理量の関係を第2図に示した。触媒を使用した場合には処理量が3.3倍ほど増加している。
(2)物質収支
1次分解槽と2次分解塔に触媒を使用したときの分解温度による生成油、生成ガス、残留カーボンの収量割合を第3図に示した。生成油は熱分解温度430から460℃では収率82から69wt%、生成ガスは13から41wt%となった。ポリエチレン処理量220s以内の実験では、1次分解槽における触媒層中のカーボン生成量は3.5wt%、2次分解塔では1.5wt%であった。また、ポリエチレン供給量に対する生成物の収量(生成油、ガス成分、残留カーボンの合計)から求めた物質収支は士5%で一致した。
特長
廃ポリエチレンの熱分解は、従来いろいろな方法が試みられてきたが、いづれもワックス状の生成物が得られ、取扱が困難で進展しなかった。
この方法は、2段階の熱分解を行い、更に天然ゼオライトの接触分解を併用して、良質な燃料油を得ることに成功した。
ポリオレフィン系プラスチック廃棄物からの燃料油の製造
○プラスチック廃棄物の熱分解法とその装置(特願)58−048927
○プラスチック廃棄物の熱分解法とその装置(特願)58−048928
○ポリオレフィン系プラスチック廃棄物の熱分解法とその装置(特願)58−048929
○廃プラスチックの溶融流れ促進方法(特願)58−194329
○プラスチック廃棄物の付着物分離法(特願)58−194330
○熱処理工程へのフィルム状廃プラスチックの供給方法(特願)59−100657
○アタクチックポリプロピレンの溶断方法(特願)昭59.11.28