TN12 ポリビニルアルコールを原料とする活性炭

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内容の要約

 プラスチック非亜樹物の有効利用法として、各種のプラスチックからの活性炭の製造が試みられている。筆者らもすでにポリ塩化ビニルの矢ン化物から内部表面積1000u/g以上を有する活性炭を製造した。しかし、布地、フィルムなど幅広く利用されているポリビニルアルコール(PVA)を原料とした活性炭の製造研究例は見当らない。本報では、市販のPVA6種類を用い活性炭の製造を試みたので報告する。

 PVAの熱重量分析の結果、600℃におけるPVAの炭化収率は4〜9wt%であり、活性炭原料として不適当であった。そこで、炭化吸収を増加させるためにPVAに各種の薬品を添加して熱重量分析を行った結果、濃硫酸を5%添加することによって炭化収率が未添加の場合に比べて約15倍増加することがわかった。濃硫酸処理したPVAを回分型流動賦活装置を用いて水蒸気賦活した結果、活性炭収率0.22〜0.26でメチレンブルー吸着量350r/g、内部表面積1,400〜1,700u/gの活性炭がえられることがわかった。

 このように、ポリビニルアルコールの濃硫酸処理でえられる生成物を窒素気流中で400〜1,000℃の温度で加熱処理し、えられた炭化物について分子径の異なる被吸着物質を用い飽和蒸気圧下での平衡吸着量より全細孔容積を求め、市販分子篩カーボンと比較した。この結果、過熱温度の高い炭化物は市販分子篩カーボン(5オンブストローム以上の分子はほとんど吸着しない)と同じような分子篩性を示すことがわかった。

 1詳しい内容

 (1) 実験に用いたポルビニルアルコールは日本合成化学工業株式会社製(商品名ゴーセノール)で、ケン化度の異なる6種類の試料を用いた。

 (2) PVAの硫酸処理

 第1図に示した内容積1,000mlの円筒型セパラバルフラスコ中に濃硫酸を500g入れ、マントルヒーターにより、170℃に加温した。30rpmで攪拌しながらPVA100gを徐々に加えた。発生する亜硫酸ガスを含むガスは、苛性ソーダ水溶液で処理した。反応時間は、前記のガス発生が認められなくなるのが全試料とも約5時間であるので、この時間を反応時間とした。反応終了後、容器中の生成物を室温まで冷却したのち濾別し、加温したイオン交換水で濾液が中性になるまで洗浄した。その後、乾燥機で150℃で12時間乾燥した。(以後この生成物をPVASと略紀する)。

 (3) 賦活

 賦活装置は、反応管は石英製で直径40oφ、高さ600oである。中心部に開孔比1.0%の分散板を有する回分型流動賦活装置を用いた。試料量は20g、粒径は0.5〜1.0oに調整した。流動層高は静止高の1.3倍とし、水蒸気量は2.0g・H2O/o、賦活温度は850℃とした。

 2 実験結果

 (1) 炭化収率

 各資料の600℃での炭化収率は4.3〜9.0wt%と非常に低い値であった。したがって、PVAを単に加熱するだけでは活性原料であるたんすかぶつを高収率でえられないことがわかった。それらの試料のうちNH−18に各種の薬品を添加した場合の炭化収率(600℃)を調べたが、そのうちとくに第1表に示すように濃硫酸添加の効果が著しく、未添加PVAに比べて約15倍の炭化収率であった。他の試料についても、略同様の結果を得た。

 (2) PVAを原料とする活性炭

 生成したPVASは色黒で、粒径は0.2〜2,0o、かさ密度は0.5〜0.54g/mlであった。なお、PVAS20g(0.5〜1.0o)を窒素気流中(200ml/o)において、昇温してえられる各生成物の揮発分量wt%を測定した結果は43〜44wt%であった。各PVASを850℃で水蒸気賦活した場合の賦活時間(θ)と収率Y(−)関係を第2図に示した。賦活の初期、すなわちPVASを反応管中に投入し、窒素気流中で250℃まで昇温する過程でPVAS中の残留揮発分が脱離し、急激な重量減少が起る第2図の直線外挿値から計算される重量減少が揮発分量より多いのは、流動層賦活時の微細粒子の飛散による減少があるためと考えられる。水蒸気を賦活濾に導入したのちは賦活時間が増加するにしたがって活性炭収率は直線的に減少する。各PVASの賦活において内部表面積と賦活時間の関係を第3図に示した。収率30wt%でメチレンブルー吸着量110〜210r/g、内部表面積1,000〜1,500m2/gの活性炭を製造することができた。

 (3) 全細孔容積

 PVASを窒素ガス中で400から1,000℃で加熱処理したものについてベンゼン、四塩化炭素、メチルアルコールおよびシクロヘキサンに対する平衡吸着量から全細孔容積を求めた。この実験の結果は加熱温度900〜1,000℃で処理されたものの細孔構造が市販のMSCの細孔構造に類似しているので、RANの硫酸処理炭より分子篩カーボンの可能性も示した。

応用分野

 廃ポリビニルアルコールの有効利用

 活性炭、さらに分子篩カーボンへの利用

特許

 ○ 活性炭の製造法(特許)1028524

 ○ 吸着剤の製造法(特許)1154628



第1図 実験装置
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第1表 各種の酸を加えた効果
Chemical added
(5wt%)
Yield of chars
(wt%)
HCl19.02
H3PO427.30
H2SO463.10
ZnCl232.70
Sample; NH-18


第2図 賦活時間と収率
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第3図 賦活時間と内部面積
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