TN1 カオリンの品質向上法

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内容要約

 製紙塗工用カオリンが要求される品質は、1)六角・薄板状の単体粒子であること、2)カオリン以外のもの、例えば石英、硫化鉄などの不純物を含まないこと、3)白色度が高いこと、などであるが、最も重要な条件は、4)粒度が小さい、ことである。これを英国規格では2μm以下重量割合が90〜100%のものをコーディング一級品、80〜85%のものをコーディング2級品、70%以下のものをコーディング3級品、そして2μm以下の重量割合が55%以下のものをフィラクレイと規定している。

 以上の要件に照らして、白老産カオリンのこの研究にかかわる問題点は、電子顕微鏡観察で明らかなように、カオリンの結晶性は非常に良好であるが、他の外国産カオリンなどに由較して、粒径が大きいこと、板状結晶の厚さがあついことである。これらの点に着目して、ガラスビースを用いた湿式ボールミルによるアトリッションによって、粒径を小さくするとともに、相乗結晶を剥離させ、薄板状にすることによって、製紙塗工用カオリンの品質の向上をはかることを本研究の目的とした。

 ガラスビーズを用いた湿式ボールミルによるカオリンのアトミッション試験によって、次の結論が得られた。すなわち、1)コート用カオリンの粒度規格が上昇する。2)フィラー用カオリンを処理することによって、コート用カオリンの増収がはかれる。3)アトリッション後のハンター白度が上る。4)アトリッションメディアとしてのガラスビーズ径の違いによるアトリッション効果に差異があり、この実験の場合、1〜2oのものが最適である。5)実験に使用したフィラー用カオリンをパルプ状態で数十分放置すると、フィラーの容器の下部の固く沈積し、リバブルが非常に困難になり、バルブのハンドリングは現状操業上の隘路になっている。24cm径のボールミルの試験で、アトリッションを30分程度かけると、リバブルが非常に容易になることがしられた。

詳しい内容

 1 9cm径ボールミルによる試験

 第1表に試験供した鉱石の化学分析を、第2表に化学分析値から求めた鉱物組成を示した。この鉱石を65mesh以下に粉砕し、エチルザンセートを用いて脱パイライト浮選を行ない、次亜鉛素酸ナトリウムで漂白したものを9cm径ボールミル試験の試料とした。アンドレアゼンピペットによる供試料の粒度分布を第3表の未処理の項に示した。

 内径9cm、内容積約400ml の磁製ボールミルにカオリン試料8gr 、イオン交換水87ml(パルプ濃度8.4%w/w)、ガラスビーズ(東芝CB503K、バレル研磨用、8〜16mesh、2,380〜1,000μm)180g、分散剤として、ピロリン酸ナトリウム溶液1ml(33.5g/lの溶液)を添加し(約0.04%溶液)、アトリッション時間を1、3、5、10、20時間とした。なお、磁製ボールミルの蓋は、アクリル製とし、ボールミル中のアトリッションの状態を観察できるようにした。

 このようにしてボールミル中の流れを観察した結果から、ボールミルの回転数を毎分240回とした。

 所定時間のアトリッション後、試料をボールミルから取り出し、アンドレアゼンピペットによる粒度測定を行ない、この結果を第3表に示した。この表の示す結果から明らかなように、大きい粒子、すなわち+3μmのものが最初17.7%あったものが、アトリッション時間とともに漸次減少し、一方品質規格の−2μmでみると、最初65%のものが、1時間で82%、3時間で92%と急増し、10時間で98%となり、これを英国規格でみると、3級品から1級品の粒度規格となることがしられた。なお、アトリッション前の試料ハンター白度は80.0で、20時間処理した試料のハンター白度は82.7であった。

 また、電子顕微鏡による観察によると、1時間、3時間、20時間と、アトリッション時間を長くとると、粒径は漸次、細かくなり、かつ薄板状になり、アトリッションの効果を明瞭に示している。

 次に、同様の手順で、バルブ濃度を高くした時のアトリッション試験を行った。これによると、バルブ濃度高くなると−2μmの生成量が僅か減少するようではあるが、約8〜22wt%の濃度範囲の試験では、大差がないことがしられた。

 2 ガラスビーズ径の効果

 前述のと同様の手法によって、ガラスビーズ径のアトリッション効果に与える影響について試験を行った。この試験で使用したガラスビーズ径は、4種類で5.0、1.8、1.1、0.6oである。なお、試験試料は白老で生産されているフィラーを用いた。4種類のガラスビーズの何れの場合も、アトリッション時間の長さとともに、粗粒分が減少し、微粒分が増加することを示し、そして、いずれの場合もアトリッション効果が認められた。次に、−2μm生成量について、アトリッション時間とガラスビーズ径の関係を第1図に示した。図中、0.6径のガラスビーズの場合、アトリッション5時間以上になっても、−2μm量は増加しないが、他のガラスビーズ径の場合は漸増する。しかし、5、1.8、1.1oでは、1.8oと1.1o径のアトリッション効果が高く、ガラスビーズ径の選択性があることが示された。

 3 24p径によるボールミル試験

 紙の塗工試験用試料を作るために準備した内径24p、内容積14.5lの磁製ボールミルを用い、前項と同じフィラーのアトリッション試験を行った。実験条件は、バルブ濃度18.9%、バルブ量3l、ガラスビーズ径1.8o、7,750g、ボールミル回転数毎分80回で、分散剤は使用しなかった。アトリッション時間を15分、30分、1時間、3時間、5時間とした。この試験の結果を第4表に示したが、前の試験結果と比較して、大きい径のボールミルのアトリッション効果が、若干高いようで、このことは、スケールアップの効果が期待される。

 特長

 北海道南白老産カオリンの品質ならびに収率の向上について,サイクロン分級試験の方法を試みたが,結果は必ずしも満足すべきものではなかった。そこで,ここに示したような方法によって、品質の改良を果たすことができた。

応用範囲

 他の鉱山のカオリン、ならびに同種鉱物の品質の向上にも応用できる。

特許

 (特願)昭和54−32861

第1表 カオリン原鉱石の化学分析(%)
 SiO253.47 Na2O0.05  TiO20.66 K2O0.02
 Al2O320.42 P2O50.07  Fe2O30.03 H2O(+)9.07
 FeO0.20 H2O(-)0.66  MnO- Fe6.77
 MgO0.02 S7.99  CaO0.07 計99.50

第2表 カオリン原鉱石の鉱物組成(%)
 Kaolinite53.5 Quartz29.3  Pyrite14.5 Albite0.4
 Orthoclase0.1 Ilmenite0.4  Apatite0.1 Rutile0.4

第3表 粒度測定結果(%)
 粒度μmアトリッション時間
未処理1時間3時間5時間10時間20時間
+300.100000
30〜202.100000
20〜102.100.3000
10〜54.02.00.8000
5〜39.44.01.63.400
3〜1.526.618.010.96.42.91.7
-1.555.776.086.490.297.198.3
-2.0*65.082.092.093.098.0100.0
*ロージンラムラーベンネット線図より求む。

第4表 粒度測定結果(%)(ガラスビーズ径1.8mm)
 粒度μmアトリッション時間
未処理0.5時間1時間3時間5時間
+524.412.59.46.22.4
5〜329.632.024.418.813.4
3〜1.531.440.842.935.938.1
1.514.614.723.339.146.1
-2.0*23.527.037.053.564.0
*ロージンラムラーベンネット線図より求む。



第1図 アトリクション時間と-2μm生成量
TN1F1.gif