NMRとタンパク質結晶学

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津田栄
1998年3月 北海道工業技術研究所報告 71,18-22

 現在、生体物質の構造と機能の解析ができる研究手法はNMR分光法とX線結晶構造解析法の二つである。 旧来のNMR法は、pHやイオン強度、温度、基質濃度などがタンパク質等に対してどのような変化を与えるかという“構造変化”研究を得意としており、分子の“全体構造決定”をすることは不得意であった。 一方、X線結晶構造解析法は結晶状態にあるタンパク質を対象としているために、NMRのような構造変化研究を不得意とし、全体構造決定を得意としてきた。 このような意味で両手法は相補的であると言われてきた。 しかし近年では、NMRでも遺伝子工学と多次元NMR法の併用により全体構造決定が出来るようになってきた。 またX線法も時間分割ラウエ法などの新技術開発により構造変化研究にも対応できるようになってきた。 このことはNMRとX線の関係が過去と現在ではかなり異なっていることを伺わせる。 本稿では、生体物質研究に関するNMR法とX線法の最新の研究手法を紹介しながら両者の今後の研究関係について考察を試みる。