微小重力下での粉体操作を行う際の諸現象
武内洋
1997年6月 粉体と工業 29(6),21-25
微小重力下で粉体操作について実験的検討を行うのには二つの目的がある。
第1は宇宙空間あるいは月面上で材料の創製を行ったり,資源・エネルギーを採取する場合に,粉体の輸送,供給,混合,分級,分散,流動化,振動等のいわゆる単位操作が不可欠である。
このような操作は古来から暗黙のうちに重力を利用したり,考慮したりして地上で発展してきた。
ところが,微小重力環境での操作を行う場合でも粉体に何らかの外力を与えなければ粉体は運動をせず目的は達せられない。
外力には遠心力,振動による力,空気などの気体による体積力等が考えられるが,微小重力環境で粉体にこのような外力を与える操作に関してはほとんどデータがなく,有用な知見を得る必要がある。
第2に,微小重力環境では複雑な現象を重力の影響無しに観察することができるので,ある工夫をすれば固気二相流のような地上では複雑な系から現象を単純化することも可能となり,地上での粉体現象の解明がすすみ工業分野への貢献も期待できる。
本稿では,筆者らが行ったいくつかの実験の中から地上では見ることのできない現象を紹介する。
さらに,地上現象の解明のための試みの一つとして,常重力から微小重力環境への遷移過程を利用した例を紹介し,微小重力環境を複雑な地上での粉体現象の解明の一手段として用いる可能性について討論する参考としたい。