微小重力を利用した水素吸蔵合金の作製
下川勝義/ 鈴木良和/ 皆川秀紀
1997年7月 粉体および粉末冶金 44,641-646
Ti-Fe合金は水素吸蔵合金として非常に有効な材料の一つである。
この合金の合成にあたり,水素吸蔵特性を向上させるため,本研究は微小重力場で溶融合金から結晶の生成・成長時にみられる熱対流の影響を抑制することに着目した。
はじめに,均質なTi‐Fe合金の合成について調べ,得られた合金の水素吸蔵特性とその微細構造について基礎的な検討を行った。
水素圧力と吸蔵される水素濃度との関連は,P-C-T曲線で示されるが,常重力下,1050℃で作製した試料ではヒステリシス曲線幅が大きく,吸蔵-放出速度は早い。
一方,微小重力場,1280℃で作製した試料では,ヒステリシス曲線のプラトー圧が低下し,そのプラトー部は平坦になった。
さらに,常重力で作製した試料では不均質な組成の構造になるが,微小重力下の試料では均質,且つ多孔質な部分が比較的均一に分散した。
さらに水素の吸蔵,放出の繰り返し後の粉化は多孔質構造の周辺では生じないことが分かった。