微小重力環境下における材料合成の最前線

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皆川秀紀
1996年11月 工業技術 37(11),27

 微小重力環境下で半導体や合金の融液を凝固させる場合の利点は2つある。 第1は熱対流の抑制で,これにより組成分布の均一な材料が生成する。 第2の利点は融液が浮遊し,管壁に接しないことである。 これは結晶成長などにおいて,成長時および冷却時において結晶の歪みの導入を避けることができることを意味しており,これが実現されれば,無転位結晶の成長が可能になる。 この管壁に接触しない状態は,一方で異なる構造の材料合成をも可能とする。 すなわち,管壁に接触しない非接触状態では融液の冷却時において,過冷却状態が発現しやすく,過冷却状態から急速凝固することで非常に均一な非晶質材料を合成することが可能となる。 つまりこれは非接触という同じ状況でありながら,溶融・凝固のプロセスを変えることで,一方では無転位の高品質結晶材料を合成することが可能となり,また一方では均一非晶質材料を合成することが可能になることを意味している。