新しく分離された炭化水素を唯一の炭素源として生育する好アルカリ性炭化水素資化性菌 Corynebacterium sp. の特性について
池田光二/ 中島健二/ 湯本勲
1996年3月 北海道工業技術研究所報告 67,26-32
炭化水素を唯一の炭素源として合成培地で増殖する微生物を土壌から分離した。
分離菌株は,絶対好気性,非運動性,グラム陽性,異染顆粒を形成した。
そして非抗酸性で芽胞を形成しなかった。
菌体壁にはメソ-ジアミノピメリン酸,アラビノウス,ガラクトースを含み,グリカン部N-アシル型はアセチル基であった。
分離菌株はカタラーゼ陽性,オキシダーゼ陰性でDNAのGCmol%が70.8%であった。
これらのテストに従って分離菌株はCorynebacterium属と選定した。
本分離菌株はpH6.2〜10.2のpH範囲で同程度生育を示し,このpH範囲でのダブリングタイムは4〜6時間であった。
分離菌株はNa+の添加によって増殖のラグタイムが短く成るが,pH7.2とpH10.2の両方でNa+を必須としなかった。
分離菌株は炭化水素の他に,酢酸,グルコース,フルクトースを唯一の炭素源として合成培地で増殖することができる。
本菌体内に含まれるチトクロウムの含量は,分光学的分析から好アルカリ性Bacillus属の細菌に比べて10分の1以下であった。
以上の結果,本分離菌は従来研究されてきたBacillus属の好アルカリ性細菌とは異なったアルカリ環境適応特性を持つものと考えられる。