IV族ハロゲン化物を触媒とする芳香族類の重縮合と複合化炭素材の製造に関する研究
-メソフェーズピッチの調整-
広沢邦男/ 鶴江孝/ 高橋富樹/ 森田幹雄
1996年1月 北海道工業技術研究所報告 66,37-41
炭素繊維はガス状の炭化水素を高温熱分解して繊維を成長させる気相法,PANのような合成繊維を炭化する方法,コールタール等の重質瀝青物質を改質して紡糸炭化する方法で製造される。
一方,炭素繊維・炭素複合材をはじめ炭素成型体の製造において骨材であるフィラーを接着させるバインダー材の重要性も増しており,このための素材として合成樹脂や改質したピッチなどが用いられている。
本研究は,上記の如き炭素繊維前駆体である紡糸用ピッチや骨材の形成に不可欠なバインダー材を瀝青物質の改質によって製造することに関する。
瀝青物質の改質法には,酸化重合法,水素化法,熱的重合法,溶剤処理法,接触法等があるが,本研究は一種の接触法の範ちゅうに入る。
芳香族類の重縮合反応においてIV族ハロゲン化物は効果的な触媒として機能し,この反応によってメソフェーズの発達した重縮合体を調製できる。
本知見に基づいて,本研究では分子内に窒素を含むキノリンと安価な軟質コールタールピッチから高性能炭素繊維製造を目標とした紡糸可能なメソフェーズピッチやバインダー材調製の可能性を,主として重縮合体の軟化点と光学異方性組織構造の観察結果から検討した。