IV族ハロゲン化物を触媒とする芳香族類の重縮合と複合化炭素材の製造に関する研究
-ハロゲン化炭素による芳香族類の重縮合と重縮合体の性状-
広沢邦男/ 森田幹雄
1996年1月 北海道工業技術研究所報告 66,14-24
著者らは,アントラセンなどの有機化合物を四塩化炭素存在下,オートクレーブ中で反応させたときに従来の重縮合温度よりも低い温度で重縮合体が生成し,さらに光学異方性組織構造も低い温度で発達することを報告した。
この反応は,四塩化炭素の熱分解によって生成するラジカルの水素引き抜きによる重縮合反応であるので,この反応を制御することによって生成炭素前駆体の性状制御が可能になると考えられる。
このような観点から,本報告では出発原料の分子構造や炭素化促進剤としてのハロゲン化炭素の違いが,原料の重縮合性や生成重縮合体(炭素前駆体)の光学異方性組織構造の発達に与える影響を明らかにしようとした。
すなわち,ベンゼンからピレンに至る15種類の芳香族類を四塩化炭素存在下で重縮合し,重縮合体の収率および性状分析結果から重縮合反応性の相違を,生成重縮合体の偏光顕微鏡観察結果から光学異方性組織構造の発達の相違を比較検討してみた。
さらに,上記の結果から重縮合反応性の異なるアントラセンとオクタヒドロアントラセンを原料として,これらをジクロロメタンからヘキサクロロメタンまでの4種類のハロゲン化炭素と反応させ,上記と同様な手法によってハロゲン化炭素の触媒作用と光学的異方性組織構造の発達の違いを比較考察した。