ガスハイドレート中のガス含有量測定の現状
内田努/ 本堂武夫
1996年10月 月刊地球 18,679-689
海底下に存在する天然ガスハイドレートが,非在来型天然ガス資源になりうる可能性が指摘され,近年そのフィージビリティスタディが盛んに行われるようになった.
その中でも最も重要なことは,ハイドレート中にいったいどれだけの量のガスが含有されているかを見積もることである.
ガスハイドレートの研究はこれまで,主に結晶構造の解析と熱力学的平衡曲線の研究とが中心に行われてきた.
結晶構造には主としてI型とII型と呼ばれる2種類の構造があり,それぞれが2種類のケージ(かご状格子)から構成されている.
これらの構造は,中に含まれるガス分子の大きさによって決まることが知られている.
I型の結晶構造をとるメタンなどのガス分子は,すべてのケージ中にガス分子が含有される場合,ハイドレートの体積の200倍ものガスが含有されることになる.
つまりガスハイドレートは,高濃度に気体を含有することができる.
しかしガス含有量について,実際に測定された例は少ない.
本当にすべてのケージにガス分子が含有されているのだろうか.