機械加工後の熱処理によるマシナブル結晶化ガラスの機械的性質の改善
鵜沼英郎/ 三浦晃/ 小平紘平
1994年1月 北海道工業開発試験所報告 60,9-12
様々なフッ素雲母に基づいた組成のガラスを結晶化させることによって、微細なフッ素雲母粒子からなる緻密な結晶化ガラスを作ることができる。
このような結晶化ガラスにはドリルによる削孔加工や鋸による切断加工を施すことが可能である。
すなわち、工具の刃先が結晶化ガラスの中にはいると、先端のクラックは雲母の粒子に到達するが、そこで雲母粒子が僻開して薄片状に割れることによって、結晶化ガラス全体にクラックが進行することが抑えられる。
このような結晶化ガラス(マシナブル結晶化ガラス)は高い寸法精度を要求される機械部品、歯冠、絶縁材料などに応用可能なセラミックスとして注目されてきた。
しかしその一方で、機械加工が可能であるということは機械的な強度が低いということとほとんど同義であり、その機械的な性質を改善するためにもとのガラスの組成を修正したりして、得られる結晶化ガラスの性質を改善する試みも行われてきた。
ところで、結晶化ガラスを機械加工するプロセスにおいては上述のように雲母の粒子が必要であるが、一旦機械加工を施した後には雲母は不要な結晶相であり、むしろ僻開性を持つ雲母粒子の存在は結晶化ガラスの機械的性質を制限しているとも言える。
そこで例えば機械加工の後に結晶化ガラスをもうー度熱処理することによって雲母相を他の結晶相に変換することができれば結晶化ガラスの機械的性質を改善することができると思われる。
本研究では、フッ素雲母に基づく結晶化ガラスを機械加工後さらに熱処理することにより、雲母をコーディエライトやコンドロード石類似結晶相などの他の結晶相に変換することによってその機械的性質を改善することを試みた。