液体封止フラックス法によるSe溶媒からのZnSe単結晶の育成

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鵜沼英郎/ 長尾二郎/ 山川裕一/ 樋口幹雄/ 小平紘平/ 岡野泰則/ 千川圭吾/ 福田承生
1994年1月 北海道工業開発試験所報告 60,5-8

 セレン化亜鉛(ZnSe)は室温で約2.7eVのバンドギャップを有する。 これは可視光の青色に相当するため、ZnSeは青色発光ダイオード用材料として注目されている。 ダイオードを形成するためにはp-n接合を作る必要があり、そのための最も望ましい作成方法はホモエピタキシャル成長であるが、その際の基板には結晶学的に高品質の単結晶を用いる必要がある。
 一般に、GaAsやCdTeなどの化合物半導体の単結晶は、原料であるこれらの化合物を融点以上の温度で溶解し、融液を徐々に冷却する方法(融液成長法、melt growth法)で育成することができる。 しかしながら、ZnSeの場合には融液成長法で高品質の単結晶を育成することは極めて困難であり、多くの場合結晶内に双晶と呼ばれる欠陥を含んだものしか得られない。 その原因としては、化学量論的なZnSeを溶融しこれを徐々に冷却する際に、ZnSeがその融点である約1520℃で一旦ウルツ鉱型に結晶化した後に1420℃付近で閃亜鉛鉱型に相転移を起こすためであると考えられている。 このため、ZnSeを用いた青色発光ダイオードは未だ実用化されていない。
 双晶の発生の原因となり得る相転移を回避するために、ZnSeを適当な溶媒に溶かし、結晶の析出温度を相転移温度以下に下げて結晶の育成を行う方法(溶液成長法、solution growth法)がある。 実際に溶液成長法によって双晶のないZnSe単結晶を育成した研究例がいくつかあり、Ga-Zn、In-Zn、Te、Sn、Seおよびこれらの混合溶媒などが溶媒として検討されてきた。
 溶液成長法は双晶のない単結晶を育成するのに適していると思われるが、実用的な観点からみると結晶の成長速度をもっと高くしなくてはならない。 溶媒の蒸気圧が高くても何らかの方法で蒸発を抑えてZnSeの育成温度を高くすることができれば、溶液中のZnSe濃度を高め、かつ結晶の成長に必要な化学種の拡散速度を高めて結晶の成長速度を高めることができる。 そこで本研究では、液体封止剤と高圧ガス雰囲気を利用して溶媒の蒸発を抑えることにより、従来よりもより高温でZnSeの単結晶を育成することを試みた。