極地氷床氷コア中のハイドレート
内田努
1994年9月 月刊地球 16,519-522
南極やグリーンランド等の極地域では,融けずに降り積もった雪が自重で圧密化され,次第に氷へと変化して,巨大な氷河(氷床)を形成する.
雪から氷へと変化する際,雪粒子の隙間にあった大気を気泡として氷中に取り込む.
このようにして毎年新しい氷の層が積み重なっていくため,氷床中には深いほど古い氷や大気が保存されている.
この氷床を掘削して,得られた氷コア試料を分析して,過去の地球環境変動を研究することが,近年盛んに行われている.
特に気泡中の大気成分は,過去の大気そのものであるため,非常に多くの情報が得られる.
例えば,南極ボストーク基地で掘削された氷コア試料中の大気を分析した結果,過去22万年間にわたる炭酸ガスやメタンガス等の,温室効果ガスの濃度変動が,地球規模の気候変動と密接な関係にあることが示された.