サロベツ原野から単離した細菌の生産する新規なリゾ糖脂質生成酵素
泉和雄/ 沢田美智子
1992年6月 平成4年度北海道開発工業試験所研究成果発表会要旨集 p51-53
近年、オリゴ糖糖鎖とタンパク質との複合体である糖タンパク質、プロテオグリカン、あるいは脂質との複合体である糖脂質といった複合糖質が、さまざまな生理的役割を有していることが知られるようになり、関心が集まってきた。
例えば、赤血球分化過程の後期段階にある細胞に作用しその分化と増殖を促進する因子と知られているエリスロポエチンは、糖タンパク質の一つで、全体の分子量の約50%を糖が占めている。
この糖タンパク質の糖鎖の大部分を酵素処理などの方法で除去してしまうと無細胞系での生理活性を失い、また糖鎖非還元末端のシアル酸という糖を除去すると生体内での安定性を著しく失うことがよく知られている。
また、興味深いことに、最近、LeX構造を持つ糖脂質同士、またGg3とGM3の両糖脂質間など糖鎖同士の間に親和性を有することが示された。
このような例に示されているとおり、糖タンパク質、プロテオグリカン、および糖脂質は、細胞表面や、細胞間マトリックスに存在し、それら複合糖質糖鎖の機能として、細胞の分化や免疫現象などさまざまな生命現象に深くかかわっている。
今後、複合糖質の研究は、医療や、医薬品、農業分野など幅広く応用されることが期待される。