高機能性無機繊維と非晶質財材の開発と利用に関する研究
-酸窒化系ガラスの製造とその物性-オルソケイ酸エチルとヘキサメチルジシロキサンからのシリカガラス繊維の調製-

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鵜沼英郎/ 鈴木良和/ 作花済夫
1992年3月 北海道工業開発試験所報告 55,27-31

 作花らは金属アルコキシドのひとつであるオルソケイ酸エチル(TEOS)を加水分解,重合させてシリカゲル繊維を調整し,それを500℃から800℃の温度で熱処理することによりシリカガラス繊維を得た。 シリカゲル繊維は数十ポアズ以上の粘性をもつゾル溶液から得られる。 太田は作花らの方法を発展させ,TEOSから得られるシリカガラス繊維は天然石英を溶融紡糸したものよりも優れた性質を持つことを見いだした。 神谷らはメチルトリエトキシシランからSi-O-Nオキシナイトライドガラス繊維を調整した。 これらの金属アルコキシドからの紡糸についての物理および化学的な研究は,作花らおよびBrinkerとSchererによって研究されている。 金属アルコキシド以外の原料を用いる他の方法も検討されている。 阿部らはケイ酸ナトリウムから得たケイ酸(silicicacid)を用い,柳沼らは水ガラスを用いている。
 しかしながら,上に述べた方法には紡糸中にゾル溶液の粘度が急速に上昇し,やがてうまく紡糸できなくなるという問題がある。 雰囲気中からの水蒸気の混入は最小限にとどめなくてはならない。 この点に関してLacourseらは紡糸可能溶液をエタノールで希釈することによリ,また,太田は紡糸溶液を室温以下に冷却することにより,紡糸時間の延長を図った。
 本研究は紡糸時間の延長と,ゾル溶液の水分に対する安定性向上を目的として,TEOSとヘキサメチルジシロキサン(HMDS)の混合溶液からのシリカガラス繊維の調整について報告するものである。 曳糸性を示す組成領域に対するHMDSの影響について調べ,得られるゲル繊維の構造について考察した。