含油スラッジ廃棄物からの流動層による熱分解油分回収技術
三浦正勝/ 出口明/ 武内洋/ 細田英雄/ 鈴木智/ 平間利昌
1992年7月 北海道工業開発試験所技術資料 14,26-26
原油貯蔵タンク,製油所や火力発電所などの貯油タンク,輸送タンカーなどからは,点検,清掃時に鉄錆や砂泥を含むワックス状の含油スラッジが多量に排出される。
この発生量はタンク容量の1%以上にも達するといわれている。
本報は,流動層を用いた部分燃焼・熱分解方式による油分回収法の有効性をベンチスケールならびに中間規模の装置を使って検討している。
2種の含油スラッジについて,層内温度や流動化ガスの酸素濃度などの操作条件が油分の回収率と回収油の性状に与える影響などについて検討し,以下の結果を得た。
(1) 流動層の温度が500〜600℃の範囲では,安定した状態で油分を回収することができる。
低粘度の油分の回収率は50〜60%,常温で固化するワックス状油分の回収率は13〜24%であった。
層温度が高くなると,油分回収率は低下するが回収油分の比重,動粘度は小さくなり軽質化された。
(2) 回収油の動粘度は,流動化ガス中の酸素濃度が高いほど小さくなり,油質が向上した。
(3) 低沸点油分の硫黄含有率は,原料スラッジの約70%に低減されていた。
(4) 流動化粒子に天然ゼオライトまたは石灰石を使用した場合は,けい砂に比べて回収油は軽質化されているが,ガス化率が高まり油分回収率は低くなった。
(5) 含油スラッジの熱分解に必要な熱分解所要熱量を推算し,390〜530kcal/kg・sludgeの値を得た。
(6) 熱分解排ガスは,有害ガスや可燃物を含むので排出残渣とともに無公害燃焼処理する必要がある。