石炭の非共有結合構造

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佐々木正秀/ 真田雄三
1991年8月 燃料協会誌 70(8),790-801

 石炭の構造中に存在する非共有結合にもとずく会合力は、石炭の溶媒に対する溶解度、粘度、石炭液化油の沸点やみかけの分子量などに大きく影響を及ぼす。 したがって、これらの非共有結合を評価あるいは制御することは、石炭の可溶化あるいは液化プロセスを設計する上で有用な指針となる。
 芳香族化合物が有する環構造中のπ-電子はいわゆるπ-π相互作用をしており、芳香族化合物の凝集力を大きく支配している因子として知られている。 一般に芳香族化合物は、より電子を引張り易い分子に対してはπ-電子を供与する。 この電子供与能はとりもなおさず芳香族分子が塩基であるということを示している。 そこで石炭あるいはそのモデル化合物(芳香族化合物)のホスト分子を電子供与体にゲスト分子としてあるヨウ素またはTCNQ(7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン)のような電子受容体との間で起こる電子授受にもとずく相互作用からこれらの分子間、分子内に存在する非共有結合について有用な知見がえられる。 本総説では石炭分子間に働いている非共有結合に関する最近の研究を著者らの行っている研究と併せて紹介する。