小さな粉
千葉繁生
1991年9月 工業技術 32(9),29-31
粉は固体状物質の形態のひとつであるが,人の顔,形,性質が異なるように個性的であり,命ずるままに振る舞ってくれるような単純な代物でもなさそうである。
うわべが他と異なっていると,はじめは戸惑うものであるが,直ぐに素性や性質,さらに潜在能力などを知るにつれて親しみが出てくるものである。
人と粉の類似性を論じるわけではないが,両者にはくっついたり,離れたり,あるいは適度の距離で共存したり,といった日常的に経験する共通した性質がある。
紛の大きさが変わると粉同士はどのように関係するであろう。
概して大きな粉ほどお互いに影響し合うことは少ないので,集合体として扱う場合でも手を拱くことは少なく,扱い易いものである。
ところがピンセットで一粒一粒をつまむことができないほど小さな粉,さらに電子顕微鏡を覗かなければ一粒の大きさがわからないほど小さな粉は,一般にくっつき易く凝集し易いために取扱いに苦慮する場合が多い。
むしろくっつき易い粉の性質を生かすこともこのような小さな粉との付き合い方のひとつである。