レアメタル湿式製錬用剤の開発に関する研究
-新規抽出分離剤の合成-

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緒方敏夫/ 中川孝一/ 原口謙策
1991年3月 北海道工業開発試験所報告 53,7-9

 本研究では,キレート官能基として未だ工業用抽出剤に採用されていないが,分析化学の分野ではよく研究されているヒドロキサム酸類に着目し,ヒドロキサム酸基を有するキレート抽出剤で効率的抽出剤を探索することとした。
 ヒドロキサム酸基をもつキレート剤の代表的な化合物はベンゾイル-N-フェニルヒドロキシルアミン(BPHA)であり,BPHAおよびその類縁体は多くの金属イオンの沈澱試薬,比色定量試薬あるいは抽出分離試薬として分析化学の分野で広く用いられている。 これらはO,O配位の二座配位子であるので,いわゆる“かたい”金属イオンとよく反応する。 しかし,従来のBPHA類縁体を湿式製錬における抽出剤として大規模に使用するには,水相〜有機相間の分配定数が小さい,有機溶媒への溶解度が小さく効率良い抽出条件が得られない,などの難点がある。
 最近,HX-70と呼ばれるトリアルキルアセトヒドロキシルアミンの混合物が,核燃料廃棄物の再処理工程における半減期の長いアクチニドの抽出剤として有効であることが報告された。
 キレート抽出剤の親油性を増加させるために,長鎖アルキル基を導入することが一般に行われている。 本研究においても長鎖アルキル基や種々の親油性置換基を有するN-置換-N-フェニルヒドロキシルアミン(R-PHA)を新規に合成し,それらの各種レアメタル抽出分離剤としての有用性を調べることとした。
 本章ではそれらの新規キレート抽出剤の合成について述べる。