レアメタル湿式製錬用剤の開発に関する研究
-溶媒抽出法によるレアメタルの分離-
原口謙策/ 緒方敏夫/ 中川孝一/ 石橋一二/ 伊藤三郎
1991年3月 北海道工業開発試験所報告 53,4-6
互いに混じり合わない二液相(通常は水相と有機溶媒相)の間の物質の分配現象を利用する溶媒抽出法は古くから物質の分離,精製に応用されている。
特に分析化学の分野では金属イオンの分離,濃縮に際し,錯形成反応を積極的に利用した溶媒抽出法の研究が積み重ねられ,8-キノリノール,ジチゾン,β-ジケトン類などに代表される多数の優秀な抽出剤による各種金属イオンの抽出分離条件が確立されている。
金属製錬の分野における溶媒抽出技術の応用は1940年代のウランの精製に始まるが,効率のよい抽出剤がなかったことと,工業的抽出技術が未発達であったことにより,一般化は遅れていた。
しかし,この十数年来,工業用抽出剤の開発と抽出技術および装置の進歩によって,銅やコバルト,ニッケルの製錬をはじめ多くのレアメタルの製錬工程において溶媒抽出法は不可欠のものとなってきた。