コールタールピッチの水素化分解
森田幹雄/ 広沢邦男
1990年3月 北海道工業開発試験所報告 50,87-98
最近の5年間におけるわが国の高温コールタール生産量は年平均約250万トンにも達しており,これらは貴重な炭化水素資源として活用されている。
一方,石炭の急速熱分解法などによる低温タールの製造は,熱分解法が技術的に比較的簡単なことからプロセスの構成によっては,近い将来経済性をもつ可能性が高く,今後化学原料源,流体エネルギー源としてコールタールの重要性は増していくものと思われる。
むしろ,積極的に石炭からコールタールを回収して利活用していく方策が,石炭を石油代替源として利用して行くための近道となるのではなかろうか。
しかし,コールタールがあまりにも多成分系であるために,その有効利用を困難なものとしている。
有効利用技術確立のためには,改質などの単位工程面や分離精製といった単位操作面のように多方面からのアプローチが必要である。
本研究では,高温タールの50%以上を占めるコールタールピッチの活用を考えるための基礎資料を得ることを目的として,コールタールピッチを水素化分解して軽質油へ転化することを試みた。
すなわち,回分式オートクレーブを用い,溶融塩化亜鉛,塩化亜鉛担持活性炭,白金およびコバルトモリブデン担持シリカアルミナなどを触媒としてコールタールピッチを水素化分解し,これら触媒の活性を比較するとともに,水素化分解生成物の性状,組成を詳細に分析した。