木質系廃棄物のガス化とガス化発電の検討
三浦正勝/ 新川一彦
1990年3月 北海道工業開発試験所報告 50,78-86
木質系資源は再生産が可能であり,古くから熱エネルギー源として活用されてきたが,発熱量や輸送性などの面から石炭,石油に置換えられ,さらに原子力へと変遷してきている。
これらエネルギー原料の変遷とともに種々の社会問題が生じ、その対応にせまられてきた。
たとえば,石炭時代には煤塵による大気汚染や多量に排出される灰の処理,石油を主とする現代では硫黄や窒素酸化物による公害問題,さらに最近では炭酸ガスによる地球温暖化がクローズアップされている。
一方,社会の高度成長に伴い有価物の排出量も増加の一途をたどり,その廃棄物の処理や埋立地の確保が間題となっているが,廃棄物の中でも木質系廃棄物は,その占める割合いが高い。
木質系物質は低硫黄,低灰分であり,使用量が生産量を上まわらない限り,更新性資源であって地球上のCO2バランス上も問題は少ない優れたエネルギー源であることから,石油代替資源として現代及び将来のエネルギー需要に応えられるような利用形態を検討する必要がある。
利用形態の一つに木質系廃棄物のガス化発電システムがあるが,現状では経済性を持つことはかなり困難である。
しかし,石油資源が乏しく無電化部落の多い東南アジアなどでは,国の電化政策などのサポートがあれば実現は可能であり,わが国においても立地条件によっては実現の可能性はあるものと考える。
これらのことから著者らは,のこ屠やコプラミールなど木質系廃棄物の水蒸気によるガス化実験を行い,生成ガス組成やその発熱量などを概観するとともに,空気をガス化剤とする部分燃焼法による連続ガス化実験を行い生成ガス利用法について検討を行った。
木質系資源のガス化については多くの報告や国内外の調査研究の文献リスト報告がある。
これらの多くは,メタノール合成などによる燃料油の製造や発熱量が約2,500kcal/Nm3以上のガスの製造,あるいは高温の生成ガスをそのまま利用するものなどである。
著者らは,ベンチスケール規模の流動層装置で木質系廃棄物を連続ガス化し,生成ガスによるガスエンジン発電を検討した結果,部分燃焼法による生成ガスは低カロリーではあるが,加圧供給することによってガスエンジンの運転が可能であり,その駆動力によって発電し地域的なエネルギーとして利用できる可能性を認めたので報告する。