石炭の液化技術開発と北開試における研究
吉田諒一
1990年3月 北海道工業開発試験所報告 50,1-15
石炭を液体として利用するための液化技術開発の世界的動向について見ると,米国では既に250t/dのEDSプロセス,200t/dのH-Coalプロセス,および50t/d並びに30t/dのSRCI/IIプロセスのパイロットプラントの運転研究を終了し,これらのパイロットプラント研究において蓄積されたデータのデータベース化が進行している。
今後のエネルギー情勢に応じ,商業化段階へ容易に移行しうる状況にあるといえる。
さらに,これらの液化プロセスの改良といった観点から,二段階液化法に基づく6t/dのプラントが運転されておリ,またco-processing法による液化技術開発をベンチスケールで実施している。
西ドイツにおいても200t/dのパイロットプラントの運転研究を終了し,現在はco-processing法に取り組むために石油残渣油を原料として運転を行っている。
さらに,イギリスにおいては2.5t/dの小型パイロットプラントが試運転段階にあり,ソ連においては5t/dの褐炭液化プラントが稼働している。
一方,わが国ではサンシャイン計画の一環としてオーストラリア・ビクトリア州のモーウェル地区に新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が50t/dの褐炭液化プラントを建設し,運転段階にある。
瀝青炭液化プロセスについては,NEDOがNEDOLプロセス(NEDO Liquefaction Process)を確立し,150t/dのパイロットプラントの設計段階にある。
この支援研究として1t/dのPSUプラントが運転されている。
北開試においては,これらのわが国における液化技術開発を支援するために,
1)石炭の化学構造と液化反応性との関係
2)触媒の開発と液化反応機構の解明
3)反応生成物の改質と特定有用化合物の分離回収
4)0.1t/d液化ベンチプラントによる液化反応/co-processing試験と工学的データの取得
などに関する研究を実施している。