諸外国における石炭転換エネルギー開発の現状とそれらの関連基礎研究
-(1)石炭エネルギー開発の経過と現況-

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小谷川毅/ 前河涌典
1989年9月 北海道工業開発試験所技術資料 13,1-30

 石炭を高圧水素共存下で液化する方法は,1914年,ドイツのBergiusによって最初に始められたことは周知である。 ドイツにおいては,第2次大戦中,Bergius法による12基の石炭液化プラントが稼働し,褐炭,タール,ピッチ,石炭から70,000bbl/dのガソリンを製造していた。 戦後,これらのプラントは閉鎖されたが,今日に至ってもなおBergius法に関する基礎研究,特に,プロセスの改良,反応圧の低下,液収率の向上,液化油のアップグレイド等に関する数多くの課題について世界各地で依然として研究が行われている。 その中で,現在もいくつかのパイロットプラントは稼働を続けているものの未だ商業ベースにのる大規模プラントを稼働させるには至っていない。
 石炭の直接液化とは,石炭液化で得られた媒体油を溶媒としてこれに微粉砕した石炭を分散させてスラリーをつくり,このスラリーを高圧水素ガス雰囲気下,高温で加熱して石炭を水素化熱分解させて低分子化させるもので,共存する触媒はこの水素化分解の反応速度を上昇させるのに役立つとともに,石炭中に存在する硫黄,窒素,酸素等のヘテロ化合物の水素化脱ヘテロ反応も促進する。 水素化分解の水素源には高圧水素ガスのほかに,溶媒をあらかじめ水素化した循環溶媒(ドナー溶媒)も用いられる。 これらをどのように組み合わせるか,によって多くのプロセスが考案されてきた。 中でも,水素供給源を何にするのかによってそのプロセスは大きく変わる。