高性能重水分離濃縮触媒
中小企業団「先端工業技術応用要覧」(s59〜60年度)抜刷
1989年3月 北海道工業開発試験所技術資料 12,198-199
重水製造法としては、既に工業化されている“GSプロセス”がある。
この反応は触媒を必要としないので便利である。
しかし、硫化水素は猛毒であり、かつ腐食性がはげしいので、環境保全上から考えても問題がある。
これに代る最も魅力ある方法として、液状水/水素間水素交換反応
HD(g) + H2O(l) = H2O(g) + HDD(l)・・・・・・・・・(1)
を利用する方法である。
この方法は、上記のような欠点を持たないばかりでなく、化学平衡論的にもGSプロセスより有効である。
しかし、この反応が現在日本で注目されているのは重水製造法としてではなく、重水および軽水中のトリチウムを除去しようとする環境対策技術としてである。
現在、日本では初めての国産重水炉原型炉「ふげん」(出力16.5万kw)が稼動している。
この場合中性子減速剤として用いられている重水と中性子の間に核反応が起り、トリチウムが生成する。
このトリチウムを
D2(g) + DTO(l) → DT(g) + D2O(l)・・・・・・・・・(2)
なる交換反応を利用して重水から抽出し、熱拡散法などで濃縮しようとするものである。
しかし、(1)あるいは(2)の反応は触媒がなければ進行せず、特に常温・常圧においてこれらの反応を促進する高活性・長寿命の触媒が必要である。
この研究は、触媒担体の疎水性という点に注目して、結果として、従来の触媒より約1000倍の高活性で、かつ長寿命の触媒を見出した。