石炭液化原油の沸点分布測定のための新熱重量法

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中小企業団「先端工業技術応用要覧」(s59〜60年度)抜刷
1989年3月 北海道工業開発試験所技術資料 12,152-153

 石炭液化油、石油、合成燃料油などの液体燃料の沸点分布は、それら燃料を構成している炭化水素類の特性を表すものであり、重要な性状の一つである。 特に石炭液化原油の沸点分布は、原炭の反応性、触媒活性、反応条件などの適否を比較検討するために、なくてはならないものである。 沸点分布を測定するには種々の方法がある。 そのうち、原油に対してはASTM D-2892(15段蒸留法)が標準的方法として用いられて来たが、多量の試料と長い処理時間を必要とし、脱水などの前処理も必要である。 それに代用する諸種の方法が出されているが固形物や水分を含んでいる石炭液化原油や石油原油などの沸点分布を直接簡便に測定することのできる良い方法は見当らない。 そこで本研究は、石炭液化原油の沸点分布を簡便で精度よく測定するための熱重量法を開発したものであって、装置は当所と真空理工で共同開発された伝熱型熱量天秤で熱重量変化と熱量とが同時に測定できるものである。 その特徴は加熱制御方法である。 加熱は赤外線炉により行われた。 その出力は第1均熱カバーの温度と試料容器温度の温度差(実際にはそれぞれの熱電対の熱起電力差、すなわちバイアス電圧)が一定になるように制御された。 この方法により試料は或る温度で必要とされる熱量が充分供給されるまで、一定の温度で加熱される。 すなわち蒸発を擬平衡的に行うことができる。 これは蒸留曲線を求めるためには、適した方法である。 この伝熱型熱天秤を用いるTG法は、その1サイクルの測定時間は90分以内と短く、迅速簡便で精度のよい沸点分布測定であることがわかった。