塩素ガスによるSiC,Si3N4およびAl2O3の腐食
中小企業団「先端工業技術応用要覧」(s59〜60年度)抜刷
1989年3月 北海道工業開発試験所技術資料 12,150-151
レアメタル等の精錬分野、高純度化プロセスの分野で塩素を取り扱う機会が増えるものと考えられる。
我々は、純金属、合金類の塩素ガスによる腐食の研究を進めてきたが、白金などの一部を除いて500℃以上の温度で使用できる金属材料は存在しなかった。
そこで、金属より高温で使用可能と考えられているセラミックスを対象として検討を進めている。
本報では、SiC,Si3N4、およびAl2O3焼結体について、800〜1300℃の間の腐食挙動を、熱天秤(TG)、等温実験、走査電顕(SEM)、X線マイクロアナライザー(XMA)で検討した。
その結果、次の所見を得た。
(1) SiCはCl2と800℃以上で反応する。
塩素化反応は表面化学反応律速の速度式(未反応芯モデル)に良く適合し、見かけの活性化エネルギーは、900℃以上で25.2kcal/mol、900℃以下で64.4kcal/molである。
(2) Si3N4は950℃以下ではCl2に侵されない。
焼結助剤であるV2O3、MgOは塩素化され、塩化物として融解、揮散する。
顕著な重量減少が観察される領域では焼結体表面は融解している。
(3) Al2O3はSiC、Si3N4と比べ腐食減量は少ない。
しかし、粒界に生成する塩化物融体のために焼結体の高温強度の低下が予想される。