農産廃棄物を原料とした四塩化ケイ素の製造方法
中小企業団「先端工業技術応用要覧」(s59〜60年度)抜刷
1989年3月 北海道工業開発試験所技術資料 12,144-145
この研究はもみがら、稲わらなどのケイ酸バイオマスを原料とする四塩化ケイ素の製造法を開発したものである。
すなわち、ケイ酸バイオマスを燃焼、あるいは炭化処理し、得られた灰分を400〜1100℃で含塩素炭素化合物又は塩素と含炭素化合物の混合物と反応させることにより四塩化ケイ素を製造するものである。
四塩化ケイ素(SiCl4)は、沸点が56.8℃の物質であり、精密蒸留技術を適用することにより、超高純度に精製することができる物質である。
四塩化ケイ素は、トリクロロシラン(HSiCl3)、シラン(SiH4)、ケイ素金属(Si)、シリカ(SiO2)、窒化ケイ素(Si3N4)、炭化ケイ素(SiC)等の各種のケイ素誘導体に容易に転換させることが可能な極めて有用な物質であり、各種の分野において広く利用されている。
例えば、これらの誘導体のうち、トリクロロシランはシリコンゴム、シリコングリース等の有機ケイ素の素材、Si金属は半導体や太陽電池素材として用いられるアモルファスケイ素原料、及びシリカは光ファイバー素材等として利用されている。
電子工業分野に用いられるケイ素製品や、有機ケイ素工業分野で用いられるシリコーンは、高純度のものであることが要求されるが、このような高純度のケイ素製品を得るには、従来、次のような方法が一般的に行われている。
すなわち、ケイ砂、ケイ石、石英粉末等のケイ素純度の高い鉱物を原料とし、これを還元材としての炭素材の存在下、2000℃以上に加熱させた電気炉で還元して金属ケイ素となした後、この金属ケイ素に塩化水素を反応させてマトリクロロシランを製造し、トリクロロシランを精留により高純度のものとなし、そして、この高純度トリクロロシランを原料として各種のケイ素製品を得ている。
ところで、前記のような高純度のケイ素原料を将来にわたって安定的に確保することは困難で、従って、資源的に安定に供給され、かつ高純度のケイ素製品を与える新しいケイ素資源の探索、確保及びその処理プロセスの開発が必要である。
高純度ケイ素製品の製造分野に見られる前記のような事情に鑑み、新しいケイ素資源として、稲、麦などのもみがらやワラ、笹の葉、トウモロコシの葉、クキなどにはシリカ分が多量に含まれており、ケイ素資源として極めて有効であることを見出すと共に、その処理プロセスの開発について研究を行った。