石炭利用工業排水の処理法
中小企業団「先端工業技術応用要覧」(s59〜60年度)抜刷
1989年3月 北海道工業開発試験所技術資料 12,142-143
現在、石炭液化の開発研究は、石炭処理量0.1〜2.4t/day規模のプラントによる運転実験が国内各地において実施されている。
また日豪協力プロジェクトとして褐炭液化法の50t/dayプラントがオーストラリアに建設中である。
更に次の段階として250t/dayパイロットプラントの計画がNEDOにおいて進められている。
実験プラントの規模の拡大とともにプロセスから多量に生ずる高濃度の廃水に対する対策も必要になりつつあり。
液化プロセスには多数の廃水源があるが、液化反応に伴って石炭中の酸素から生ずる生成水は最も大きな汚染源とみなされる。
ここでは当所で実施している直接液化法から生じた生成水の成分分析と微生物処理の基礎試験の結果を報告する。
実験は、炭素66%の豪州ヤルーン炭から炭素87%の新夕張炭まで、石炭化度の異なる5種類の石炭を原料とし、反応条件の異なる約20種類の生成水を試料とした。
その水質は有機態炭素(TOC):20,000〜40,000mg/t、CODcr:50,000〜130,000mg/t、アンモニア態窒素:4,000〜20,000mg/t、フェノール:5,000〜23,000mg/tであり、汚染物質を多量に含んでいる。
フェノール以外の主要な含有有機物質はクレゾール、シクロへキサノール、アニリン、ピロール、低級脂肪酸、アセトニトリルなどである。
有機成分の組成には試料炭の違いに基づく特徴が見られ、例えば炭化度が低く酸素含量の多い石炭の場合には、脂肪酸など含酸素化合物が多量に含まれていた。
これらの廃出水に対しよく馴化した活性汚泥を用いて生成水の希釈溶液を処理するならば、TOCおよびCODcrの85〜90%、またフェノールのほぼ100%を比較的容易に除去できることが分かった。
回分法の場合、処理可能な最小の希釈培率は10〜20倍で、フェノール濃度が主な阻害因子と考えられた。