オゾンによるトランスファーリボ核酸の分解

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中小企業団「先端工業技術応用要覧」(s59〜60年度)抜刷
1989年3月 北海道工業開発試験所技術資料 12,138-139

 近年、分子生物学や遺伝子工学などの発展によって、遺伝子組換え技術を駆使した研究が盛んに行われるようになっている。 それに伴いこれまでに存在しなかった病原性微生物を作り出す危険性も増大しており、そのためこの遺伝子組換え実験には内容に応じて徹底したバイオハザード防御対策が求められ、安全キャビネットやセイフティールームの性能の改良・向上の研究が必要とされている。 一方、当所では、オゾンによる下水の高度処理に関する研究を実施して以来、オゾン分解に関する知識を蓄積してきた。 そこで、すぐれた酸化破壊力を有するオゾンを用いれば、殺菌・分解効率が上がり、上記問題点の解決に寄与できるのではないかと考えた。 又、オゾンは空気と電力から容易に製造することができ、制御が簡単であり、使用オゾンも活性炭などで除去することが可能で大気を汚染しないですむことから、安全キャビネットやセイフティールームにこれを用いれば、自動化された滅菌システムが確立できると考えられる。 そこで遺伝子組換え操作を念頭に、バイオハザード防御対策にオゾンを使用することのより確実な根拠を得るために“オゾンによる核酸の分解に関する研究”を進めている。
 この研究では、まず最初にリボ核酸(RNA)についてオゾンによる分解機構の解明を試み、核酸のオゾンによる分解の一般的傾向をおさえ、次のこの分解機構をもとに遺伝子デオキシリボ核酸(DNA)の分解機構の検討を行っている。 さらにウイルス、枯草菌、大腸菌などの殺菌、不活性化の様式、あるいは殺菌機構を検討しているが、このような核酸の分解機構、微生物の殺菌機構の検討はオゾンは言うまでもなく他の殺菌剤についても全般的に不十分な状況であるので本研究はその点からも意義があると考える。 そのうちここではRNAの代表例としてトランスファーRNA(tRNA)の分解機構について報告する。