多孔質アルミナの細孔径制御法

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中小企業団「先端工業技術応用要覧」(s59〜60年度)抜刷
1989年3月 北海道工業開発試験所技術資料 12,134-135

 この研究は多孔質アルミナの細孔にホウ酸、水酸化アルカリ、塩化カルシウムなどの溶融塩を含浸させ、これを所定の温度で焼成したのち、これを熱水又は希酸で処理して含浸させた塩を抽出除去することにより、アルミナの細孔径及び表面酸性度の制御法を見出したものである。
 一般に多孔質固体は触媒として、あるいは触媒の担体として用いられているが、中でも、シリカアルミナ、アルミナ、シリカ、その他の金属酸化物の工業的用途は広い。 しかし、これら固体の持つ細孔径は20〜数100Åに幅広い分布を持つことが通常である。 それは、多孔質固体の調製法と得られた細孔の生成機構との相関々係が明らかになっていないため、積極的に意図した細孔分布を持つような多孔質固体を調製することが本質的にできないからである。 多孔質固体の調製法には沈でん法、熱分解法、その他、特殊な方法として炭酸ガスによる中和法などがあるが、沈でん法において沈でん生成時のpHを変えたり、熱分解法において分解温度を変えたりして調製が行われたりしているものの、このような手段では特に細孔径分布を制御することは困難である。
 例えばこのような効果を持つ典型的な多孔質固体はゼオライトである。 ゼオライトの細孔は結晶中の原子間結合によって決められた空隙であるためその大きさは結晶構造によって異なるが、細孔径は分子篩効果を持つほどに良く制御されている。 しかし、ゼオライトはシリカとアルミナから合成される結晶であるため、シリカ単味、アルミナ単味、その他の酸化物に対して同様の手段を講じて結晶を形成させても同じ結果は期待できない。
 この研究では、多孔質のアルミナに溶融性塩類の水溶液を含浸乾燥させ、これを加熱焼成したのち、冷却し、水又は希酸水溶液で含浸した塩類を溶出分離することを特徴とするアルミナの細孔径制御方法を開発した。
 この方法に用いられる多孔質のアルミナとは沈でん法、熱分解法などの通常の方法で得られるもの、あるいは、硫酸アルミニウムと尿素との混合物の水溶液を95〜100℃に加熱して得られるアルミナゲルを所定の温度で焼成して得られる10Å以下の細孔径形成に好適なアルミナ類である。