水素同位体の分析法
中小企業団「先端工業技術応用要覧」(s59〜60年度)抜刷
1989年3月 北海道工業開発試験所技術資料 12,124-125
これまで水素同位体、特にHD(軽水素と重水素が結合した分子)の定量分析にはもっぱら重水素専用の質量分析計が用いられてきた。
しかし、本装置は高価であり、かつ高度の真空を要するので、測定には専門的な技術を必要とするなどの難点がある。
一方ガスクロマトグラフィーは操作が簡単であるため、これによる水素同位体の分離分析法が検討された。
この方法の欠点は、(1)分析に数分ないし十数分を要する。
(2)検出限界は0.1%程度で天然存在比(0.015%)に近い低濃度HDの分析ができない。
(3)キャリヤーガスと試料中に含まれる空気成分が分離カラムに吸着蓄積され、分離効率が変わり分離成分の検出感度が徐々に変化する、ことなどである。
本法ではこれらの欠点の改良を検討し、HD濃度が低い場合は水素キャリヤーガス-モレキュラシーブ(室温)法を、高濃度HD及びD2(重水素)は水素キャリヤーガス-活性アルミナ(-195℃)法を組み合わせることにより、重水素のほぼ全領域にわたって短時間に分析することが可能であることを示した。