寒冷地型高度水処理技術

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中小企業団「先端工業技術応用要覧」(s59〜60年度)抜刷
1989年3月 北海道工業開発試験所技術資料 12,100-115

 北海道のような降雪寒冷地においては、冬期の凍結や積雪のため温暖地のように下水や産業排水などの処理施設を屋外に設置することができず適当な上屋を必要とし、更に水温を処理適温に維持するために加温を必要とする場合もある。 特に、本道の産業は農林、畜産および水産などの加工業が多くこれらの産業排水の処理には活性汚泥法などの微生物処理が最も効果的であることが知られている。
 しかしながら微生物処理は水温の低下とともに活性も低下し、5-6℃以下では見掛け上活動が停止したかのようになる。
 従って、微生物処理を行う場合には水温を少なくとも10℃以上に保つ必要があり、寒冷地ではこのため多額の燃料費が要求される。 以上のことを総合すると、従来温暖地方で普及している微生物処理技術を適用すると上に述べた防寒施設費および燃料費を含めて温暖地方の約3倍の経費がかさむと言われ、これが本道における産業排水処理普及の大きな隘路になっている。 このような現状から、寒冷地における水処理に対して抜本的研究と技術開発を早急に行う必要があると判断し本研究の立案となった。 研究立案に際しては
1)対象排水の選定および目標水質の選定
2)開発対象とする水処理技術の選択
3)1)、2)に対する寒冷地向技術開発
等を中心に検討を重ねた結果、成果に普遍性を持たせるため特定の排水を対象とせず種々の排水や下水で汚染された河川水を上質な産業水として利用するための高度処理技術の開発を行うこととした。 研究開発の具体的目標は、(1)処理水の水質をBOD 10mg/l、アンモニア態窒素2mg/l、およびオルトリン酸態リン0.2mg/l以下とする。 (2)処理方式は微生物処理を主体とし水処理施設は屋外に設置し得るものとする。
 そのために、設置の占有空間をでき得る限り小さくするように立体かつコンパクト化し、また熱損失を防止するため可能な限り密閉構造とするなど従来の開放池型平面構造に代わるいわば塔構造の装置構成からなるプロセス開発を主眼とする。
 そして、上記の目標に沿う高度処理プロセスとして、次の単位処理による構成が提案された。 原水→a)疎水性媒体接触式油分分離処理→b)多段曝気式活性汚泥処理→c)吸着材を使用する微生物脱窒処理→d)脱リンろ過処理。 a)はエマルジョン状に分散した油分を含む排水を疎水性媒体(ポリエチレンや人造ゴム等を粒状にしたもの)に接触させることにより、媒体表面に微細油分粒子を附着合一させ大きな油滴に成長させて浮上分離する原理に基づいている。 b)は、従来主として開放面の大きい池型曝気槽を用いて行っている活性汚泥処理を、多数の目皿で仕切りをつけて多段化したカラム型曝気槽中で行わせるもので反応効率の増大、装置のコンパクト化および熱損失の防止等を図る。 c)は、被処理水を天然ゼオライト充填槽に通してアンモニウムイオンを吸着除去しついで使用済ゼオライトを硝化槽に移し硝化菌の作用により吸着したアンモニウムイオンを硝化脱離させて再生、循環使用する。 硝化液はゼオライト通過液と合体して、脱窒菌を附着させた活性炭で窒素に還元してアンモニア態窒素を除去する方式である。 d)は、仕上げ工程で複層ろ槽、リン吸着剤充填槽および粒状活性炭槽を直列に連結しオルトリン酸態リン、濁度および微量有機物などを除去するのが目的である。 複層ろ槽へ通ずる導水パイプの注水口附近で、凝集剤およびpH調整剤を添加するようになっており槽内における接触凝集作用により脱リンや除濁効果を向上させるようになっている。 以上の高度処理プロセスの研究には各単位処理毎に研究グループを組織し、基盤研究を行ってそれぞれの試験装置を試作し、後半でこれらを直結した一連の高度処理プロセスに対する連続処理試験を行って評価を試みた。