低温下で活性の高い脱窒菌
中小企業団「先端工業技術応用要覧」(s59〜60年度)抜刷
1989年3月 北海道工業開発試験所技術資料 12,68-69
廃水の窒素除去技術は、生物学的脱窒法と物理化学的脱窒法に大別されるが、生物学的脱窒法が有望とされ、我が国でもいくつかの実プラントが稼動している。
生物学的脱窒法は、従属栄養菌(BOD酸化菌)により有機態窒素から生産されたアンモニアを、硝化菌が好気的に亜硝酸さらに硝酸まで酸化する硝化過程と、脱窒菌が嫌気的に硝酸又は亜硝酸から窒素ガスまで還元する脱窒過程から成っている。
脱窒菌は、pH、C/N比、炭素源の種類、溶存酸素、温度等の環境因子に大きな影響を受けることは、従来から良く知られている。
脱窒に影響を及ぼす環境因子のなかでは、水温の低下が実用上特に重要な問題である。
一般に脱窒菌の最適温度は25〜30℃であるとされている。
また脱窒の活性化エネルギーから、脱窒菌の温度依存性が高いことも知られている。
したがって寒冷地の冬期における生物学的脱窒法は、脱窒菌の活性低下により実施は困難であるばかりか、低温下での脱窒菌に関する基礎的なデータも少ないのが現状である。
我々は、寒冷地における冬期の生物学的脱窒法を、より効率よく行うことを目的として、低温下でも活性の高い脱窒菌を探索することから研究を始めた。
低温下で活性を示す脱窒菌の探索と分離菌株の同定を試みるとともに、分離菌を用いて、環境因子の脱窒への影響を検討し、次の結果を得た。
1) 水田土壌から分離した5℃で脱窒能を示す菌株のなかで、活性の高いN-1株を得た。
この菌は、細菌分類書の記載と、その性質がよく一致したが、未調査の性質もあり同定までには、さらに詳細な検討が必要と思われた。
2) 脱窒活性におよぼす環境因子を調べたところC/N比3.5付近が最適で、炭素源としては、酢酸、クエン酸、グリセリン等が優れていた。
水温は25℃付近で脱窒活性が高く、低温になるに従って、中間体としてのNO2-Nが蓄積するようになった。
供試菌は5℃で、約0.0140〜0.0210mgNO3-N/mg Cell/hrの脱窒活性を示した。