寒冷地における工場排水の高度処理(プロセス)
中小企業団「先端工業技術応用要覧」(s59〜60年度)抜刷
1989年3月 北海道工業開発試験所技術資料 12,66-67
(16・17)において、寒冷地に適した排水の高度処理プロセスを構成する各単位処理の研究開発について述べたので、ここではこれらの単位処理を連結した高度処理プロセスの性能評価をする目的で行った連続処理試験結果について述べる。
近年、下水の三次処理の必要性が各国で論議されその実施要望が年毎に高まっている。
道内に於いても大都市では、環境保全上の問題のみならず産業用水源となっている河川や湖沼の汚濁防止という水資源保持の立場から、しばしば取り上げられており近い将来実施が必至趨勢にある。
一般に、三次処理は既設の二次処理に付加する処理をいう下水用語で、高度処理と若干定義が異っている。
高度処理は、既設の処理(処理方式、処理施設)にこだわらず一次処理から三次処理迄のプロセスを新たな構想に基づいて構成するもので、合理的かつ効率の高い方式である。
従って、将来新しく建設される下水処理場は高度処理方式の採用が予想されるが、本研究は単に下水のみならず道内産業に多く見られる微生物処理可能の排水を対象にした汎用型の高度処理技術開発を目的にしており、その具体的目標は、(1)処理水が上質な用水として、再利用出来る水質を有すること(BOD<10mg/l、NH3-N<2mg/l、PO4-P<0.2mg/l)、(2)高度処理プロセスを構成する処理装置群は、寒冷降雪地でも屋外設置が可能な密閉式かつ立体的な塔型構造であること、等が主眼になっている。
そのためには、従来用いられている曝気槽、沈殿槽や凝集槽などのような装置容積に比して液表面の大きい装置は、蒸発潜熱による熱損失が大きく寒冷地には不向きなので、出来得る限り液表面積の小さな密閉式の装置が要求される。
このような塔型の装置が出来ると半地下へ埋没することが出来、地上部分を断熱材で被覆することにより屋外設置が可能になる。
本研究は、以上の目標に沿う高度処理プロセスの開発を主眼として進められたが、連続処理試験の結果開発されたプロセスが目標を上回る上質な用水を生産する性能を持ちかつ野外設置可能な装置構成であることが証明された。
従来寒冷地で不可欠とされていた装置を収納する建屋が不要となり、管理棟以外の暖房費も不要となるので、その経済効果は大なるものがある。