900℃まで熱重量変化と熱容量変化が同時測定できる「熱量天秤」の共同開発

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中小企業団「先端工業技術応用要覧」(s59〜60年度)抜刷
1989年3月 北海道工業開発試験所技術資料 12,50-53

 当社は日本真空技術グループのメーカーであるが、熱分析装置、熱物性測定装置、赤外線炉・電気炉デジタルコントローラを主として生産している。 主製品の熱分析装置は我が国の代表的製品である。
 規模的には完全な中小企業であるが自社ブランドの製品製造販売を自主的に行い、年間1億円の研究開発費を使い、7人の専門研究開発研究員をかかえている開発型企業である。
 オイルショック以降、省資源、省エネルギーが注目されると相次いで新素材が誕生するようになり、新建材の火災実験データ分析とか、エンジニアリングプラスチックのテスト、セラミックに中間物として使用されているバインダーの熱変化、復写機等に使用されているトナーのカーボン量測定と新しい試料の測定分析に対応する技術や装置の開発が必要になっていた。
 このような状況の中で、北海道工試では産業廃棄物の中にどれ位のプラスチックが入っているかの研究をしていた。 しかし、従来の熱量天秤では正確な発熱量を測定することが難しく困っていた。 特に従来のものは試料を10〜20mgしか入れられないため産廃のように少くとも1〜2grの試料で測定する必要のあるものには対応できなかったし、900℃という高熱までを連続的に測定することなどができないため新しい熱量天秤の必要性をさし迫ったものとして感じていた。 そこで、専門メーカーであり研究開発に熱心な当社へ昭和54年に新しい熱量天秤のテーマが持ち込まれた。 メーカーとしても同様の認識を持っていたため両者は早速開発に着手した。
 基本的なニーズは北海道工試がまとめ、これに従ってメーカー側が試作機を作った。 試作第一号機は開発に着手して1年後の55年に出来上り早速各種のテストが北海道工試の側で進められた。 試用結果のデータ解析後両者で協議し即改良が行われ、また試用してみるというキャッチボールが何度か行われた。 そして2年後に商品化に成功し発売されたが、今日までに30台弱が各種の研究所や大学に納められている。 もちろん完成品の1号機は北海道工試に納入されており、いわば研究者としての立場だけでなくユーザーとしての立場からもソフトウェアの面で指導を仰ぎハードはメーカーが知恵を出すという形での共同開発だったわけである。
 北海道工試との関係は現在も続いており、新しいサンプルの測定があると相互にデータを交流しさらによりすぐれたものへの研究開発が続けられている。