炭化珪素膜の評価技術

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中小企業団「先端工業技術応用要覧」(s59〜60年度)抜刷
1989年3月 北海道工業開発試験所技術資料 12,32-33

 各種表面分析手段の開発と進歩にともないその多方面への応用に関違して、定量的分析方法の確立が急務とされている。 その際の重要因子として、固体表面の二次元的ならびに三次元的分析と、入射ビームを可能なかぎりしぼっての局所分析における分解能と感度向上とがあげられている。 一方、実際上の問題としては合金材料や化合物材料がしばしば分析の対象とされるが、その場合には元素分析のほかに状態分析が必要となり、特に定量的分析法の確立が重要視されている。
 この報告は無機固体化合物の表面および深さ方向における定量的状態分析法の確立を目的として、X線光電子分析法(以下XPSと略記)の利用により炭化ケイ素材料表面を対象にして行った研究である。
 炭化ケイ素(以下SiCと略記)は各種の工学的用途を有するが、最近特に核融合炉第一壁材料として有望視され、プラズマとの相互作用という観点から研究例が増加しつつある。 特にプラズマ中への不純物混入の軽減を目的としての、低原子番号材料の金属表面へのコーティングが注目されている。 本研究では、まず均一エッチングのための最適条件の選定を行うとともに、XPSによる状態分析における光電子収量の基本的な検討を行い、探さ方向の定量的状態分析法の確立をはかった。 次いで、核融合炉第一壁材料としてのSiC膜に応用してこの方法の適用性を実証しようとした。 その結果、未だいくつかの未解決の問題は残されているが、多くの実用に耐えられる方法を確立することができた。
 今後、より高い定量精度、深さ方向分解能のための改善が必要であるが、XPSが薄膜の深さ方向分析に極めて有力な測定手段となり得ることが実証された。 また、他の手段(例えばオージェ分析)との複合化による同時測定はより効果的な分析手段となるであろう。