ポリアクリルニトリルを原料とする活性炭

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中小企業団「先端工業技術応用要覧」(s59〜60年度)抜刷
1989年3月 北海道工業開発試験所技術資料 12,22-23

 本研究では、ポリアクリロニトル(以後PANと略記する)を用い流動化法によって活性炭を製造し、その物性を測定するとともに、重金属、有機系ガスの吸着特性を調べた。 PANを空気中で加熱すると熱縮合(熱分解)して、耐熱、耐炎性に富んだ縮合物となり、これらの性質を利用し、炭素繊維を製造できることはすでに知られている。
 活性炭に窒素含有化合物を添加すると、重金属類の吸着量が増加することは、著者らによって明らかにされたが、この事実からPANの熱縮合物を出発原料にした活性炭中に、窒素が含有されるならば、重金属類の吸着量の大きい活性炭の生成が期待される。
 先にポリ塩化ビニルを含んだ廃プラスチックより活性炭を製造し、その性質を検討した結果、プラスチック廃棄物を原料とする活性炭の製造がきわめて有望であることを報告した。 PANについても、PANおよびその共重合体を原料とする衣類、製造過程で廃出される産業廃棄物が多いことから、未利用資源の有効利用の見地からも、PANを原料とする活性炭の製造法を研究することは有意義なものと考えた。
 PANを出発原料とした活性炭(PANAC)の製造法について研究した結果、次のことが明らかになった。
 賦活生成物の活性炭としての性能は、賦活温度800〜900℃(収率20〜27%)で、メチレンブルー吸着量300〜400mg/g、内部表面積1,300〜1,400m2/g程度であった。
 有機系ガスの吸着では、一般活性炭に比べPANACのブチルメルカプタンの吸着量が6倍以上の340%であり、その原因のひとつとして賦活生成物のニトリル、アミノ、ジアゾ基が関係するものと推察した。
 重金属類の水溶液からの吸着試験結果は比較した市販活性炭と同等の性能を示した。
 現在、悪臭公害として問題となっているメルカプタン類は、特に優れた吸着剤もないので、PANACは悪臭防止用として有用な素材になると考えられる。