タール油からの有用化学物質の分離法

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中小企業団「先端工業技術応用要覧」(s59〜60年度)抜刷
1989年3月 北海道工業開発試験所技術資料 12,20-21

 タール油の成分々離について、石炭液化油を例として水酸化カリウム水溶液による方法を開発した。 石炭液化油はナフサ留分からピッチ類に至る幅広い分子量分布を有しており、その性状は芳香族および極性基に富んでいる。 それらの中でもフェノール類は化学工業用原料として有用であり、効率の良い分離・利用が石炭液化プロセスの経済性を向上させるために重要である。 その分離法の一つとして酸塩基による抽出・中和分解法がある。 当所では既に5〜40wt%の水酸化カリウム水溶液による酸性油の抽出分離を試み、水酸化カリウム濃度が高くなるにつれて次第に側鎖長が長く酸素含有量の少ないフェノール類が得られるが、さらに水酸化カリウムの濃度を1〜40wt%とし、同一試料から繰返し抽出することにより得られた酸性油などの性状等について検討した。
 石炭液化油のナフサ留分を水酸化カリウム水溶液により順次、抽出・中和分解を行い酸性油、塩基性油を段階的に分離し、各抽出物の分析・同定を行った。 この結果、抽出量が増すに従い順次分子量の大なるものが抽出分離されることが分った。 この方法で酸性分・塩基性分を完全に液化油から分離することは可能であるが、各成分中の任意の化合物の分離は十分とは言えず今後抽出工程の段数を増加させることなどによって酸性分・塩基性分の分離と各成分中の含有成分の分別を同時に行える可能性があるものと考えられる。