高密度炭素状物質の製造法

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中小企業団「先端工業技術応用要覧」(s59〜60年度)抜刷
1989年3月 北海道工業開発試験所技術資料 12,18-19

 合成樹脂や瀝青質の炭素化方法において、ハロゲン化炭素化合物を炭素化促進剤として加えることにより、比較的低い温度を用いて合成樹脂や瀝青質から高密度炭素状物質を得る方法を開発した。
 一般に、有機化合物を炭素化すると耐熱性、耐薬品性の優れた緻密な炭素状物質が形成される。 これらの炭素状物質はその特性を利用して顔料、充てん材、吸着材あるいは繊維などとして使用される。 このような炭素状物質には、無定形炭素、活性炭、炭素繊維、グラファイトなどがある。
 有機物質の炭素化反応は熱的作用により縮合して次第に多環芳香族巨大分子に変化し、最終的に炭素を主体とした構造の物質が形成される。 このような有機化合物の炭素化は熱分解反応が活発に生起する500℃以上の反応温度が必要であり、結晶性の高い炭素状物質を得ようとするときには、さらに高い温度を用いなければならない。 その上、有機物の種類によっては、熱分解による縮合反応の間にガス状物質と共に、取り扱いのやっかいな液状物質を副生し、炭素化効率を劣化させるという欠点を伴う。
 このような有機物の炭素化に際して伴う種々の難点を克服し、合成樹脂をハロゲン化炭化水素の存在下で加熱するとき、比較的低温で良質の炭素状物質を製造しうることを見出した。
 たとえばポリエチレンと四塩化炭素を400℃で2時間反応させた場合、メタンと塩化水素ガスを主体とするガスと炭素状物質以外液状物は全く生成せず、ポリエチレンの炭素はほとんど全てが炭素状物質に転化しており、かつ四塩化炭素の炭素原子の一部も炭素状物質として形成されている。
 これらのことからもフィラーをピッチや樹脂などをバインダーとして成形し、炭素成形品を作る場合に従来法では、液状の副生物の除去に苦労するが、この方法では液状部分も炭素化されることになり、非常に密な良質の炭素成形品を得ることができる。
 また、炭素化温度が低くても十分縮合度の高い炭素状物質を得ることができるので、例えば熱硬化性樹脂をあらかじめ金属表面へライニングしておき、ハロゲン化炭素を最適量加えて反応させると樹脂はそのままの形状で炭素化されるため、金属が十分耐え得る温度で炭素材をライニングすることができる。
 これらの炭素化促進剤の使用量は、原料の性状、特に分子構造中に存在する水素含量、酸素含量、ハロゲンの種類及び含量、あるいは使用されるハロゲン化炭素化合物のハロゲン含量や熱的安定性などにより一定しないが、通常炭素化用原料の重量当たりおよそ100〜200%の範囲である。 ハロゲン化炭化水素系合成樹脂を炭素化用原料として用いるときは反応の進行とともにハロゲン化水素が生成するので、ハロゲン化炭化水素の使用量を他の合成樹脂の場合よりも少なくすることができる。 反応温度はハロゲン化炭素化合物の分解温度に依存するが、おおよそ180〜500℃の範囲が用いられる。 また反応系は常圧でも加圧下でもよいが、通常、例えば10〜250kg/cm2程度の加圧下で有利に行うことができる。
 このような条件のもとで、数分ないし数時間炭素化処理を行うと、炭素化用原料は、塩化水素および炭化水素を主体とするガスを発生しながら炭素化し、緻密な組成の炭素状物質に変化する。